【相手の話をちゃんと聞く技術】聞き方の2タイプ~「聞く=賛成する」ではない!

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今回の探究テーマ

前回までの記事で、自分のことも大事にして、相手のことも大事にする世界では、対話の技術が必要で、対話の技術としては「伝える」と「聞く」が大切であると話をさせていただきました。今回は、相手の考えや気持ちを「ちゃんと聞く」ための具体的な方法をご紹介します。

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相手の考えや想いを「聞く」技術

前の記事で、大調和(自分も大切にして相手も大切にする)」を生きるために、対話の技術が必要であると申し上げました。

また、対話の技術としては、「伝える」「聞く」が大切であると話をさせていただきました。

相手の考えや想いをしっかりと聞くことは、大調和を生きるための技術・スキルとして非常に重要です。もちろん自分の考えや想いを伝えることも大切ですが、同時に相手の考えや想いをきちんと聞けるかどうかが重要です。言うばかりで聞けない場合、どうしても自分勝手になってしまうため、しっかりと相手の考えや想いを「聞く」ことが必要になります。

左脳的に聞く

聞き方は大きく分けて2つの方法があります。1つめは、どちらかといえば左脳的に聞く方法です。この聞き方は大きく3ステップに分解できます。

左脳的に聞く
  • STEP1
    相手の意見を聞く

    どのような考えであるのかを、しっかりとまず聞く

  • STEP2
    ベースの考え方や価値観を聞く

    その相手の意見の基盤となる考え方や価値観が、なぜその意見になっているのかという「なぜ」というところを聞く

  • STEP3
    STEP2が生じた背景や価値観を聞く

    さらにその考え方や価値観が生じてきた背景や体験のようなものを聞く

STEP3まで聞けると非常に良いのですが、大きく分けてこの3段階で聞くということです。

ここで重要になるのは、きちんと聞く、受けとめるということですが、これは意見に賛成するということではありません。意見は異なっていても構いません。「あなたの意見はそうなんですね、私は違うのですが」という形でも構いません。

しかし、そのように考える背景や理屈はきちんと受け止めようとすると、「そういう背景でそう考えているのですね」「そういう理屈でそのように考えるのですね」ということを、まずは理解する、あるいは受けとめる必要があります。

聞いたからといって(相手に)賛成しなければならないとか、自分の意見を変えなければならないわけではなく、しっかりとまず「あなたはそうなんですね」とか、「そういう考えになった背景はそういうことがあったのですね」ということを、しっかりと理解する、あるいは受けとめることが聞くということです。

相手の話を聞きましょうというのは、相手の意見をとにかくきちんと受け入れましょう、賛成しましょうということではありません。この切り分けは非常に重要な点です。

さて、今のステップでもう少し詳しくお話ししていきますと、まず相手の意見を聞くということですが、例えば「伝える」の記事の方で出した例で、会社の上司が遅刻しがちという例を出しました。

STEP1:相手の意見を聞く

それで考えてみますと、「なぜそんなに遅刻するのですか(一般的な出社時刻である9時に来ないのですか)」という質問をしたとします。相手の意見として、「就業時間の9時というルール、このルールを守ることは別に正直重視していない。今まで守れと言われたこともないし、言ってきた人は初めてだし、ちょっとびっくりしているのだけれども、全然私は気にしていない」という意見だとします。

おそらくそのような言い方にはならないと思いますが、「気にしてません」。これが相手の意見です。(相手は)気にしていない。こちらは気にしているけれども、相手は気にしていないのです。

STEP2:ベースの考え方や価値観を聞く

では、その気にしていないという意見の基盤となる価値観や考え方ですね。

「え、なぜ気にしていないのですか?私は気にするタイプなのですが、なぜ気にしていないのですか」と尋ねたときに、「でも仕事は、始まりの時間やルールを守るのではなく、ちゃんと最終的な納期が守れるとか、パフォーマンスが出せるとか、生産性が高いとか、ちゃんと付加価値を出せることが大事なのであって、朝の9時に来るというのは仕事の本質ではないよね。10時に来た方がパフォーマンスが高いのであれば、そちらのほうが良いだろうし、8時に来てそれでパフォーマンスが高いのであれば、別に9時ではなく8時に来ても良いだろうし、自分はそういう考え方で仕事しているのだよね」と返ってきます。

「そうなんですね」と。これもまったく自分と違うかもしれません。「嫌だ」という人からすると、「ルールはみんながきちんと守りましょうと言ってルールになっているのだから、勝手にルールを破ったらダメだろう」とかですね、色々な気持ちがあるかもしれません。

いったん置いておいて、保留するとも言いますが、いったん置いておいて、「そういう考え方なのですね。パフォーマンスが出れば別にルールは一番重要ではない、本質ではないという考えなのですね」と受け止めます。

STEP3:STEP2が生じた背景や価値観を聞く

「なぜそう思うようになったのですか」というところまでさらに聞けると、より受け止めやすくなるケースが多くあります。

例えばですが、「いや、自分は学生時代に部活をやっていて、すごいエースで強い先輩がいた。その人に憧れてやっていたけれども、その人は全然みんなと同じような練習をするとか、みんなが守っているルールを大切にするというタイプではなく、自分なりに考えて、こちらのほうがもっと上手くいくのではないかとか、今までのルールと全然違うことをやったりとか。それで先生とぶつかるような場面もあったけれども、それでも結果を出してきた人がいて、すごく格好良いなと思って、自分もこのルールに縛られるのはやめて、きちんと本質的に何が大事なのかを考えてやるということをやってきて、それで自分としても上手くやってきた、やってきたと思っているので、そういう考え方になっているのですよ」という話が、例えばですよ、聞けたとします。

そこまで聞けると、まったく話を聞く前の「なぜこの人、全然朝来ないのだろう」というよりは、「ああ、なるほど、そういう人もいるのか。それでも私はきちんとルールは守ってほしいタイプだけど、まあ前よりは少しわかる気もするかな」というような状態になっているかもしれません。

そこまできちんと聞いて受け止めたら、多くの場合、相手もかなり自分の話を聞いてくれるようになります。「私がなぜルールをそんなに大切に思っているかというと、こうでこうでこうで…」と今度は自分が話す番がやってきます。

これは、自己啓発の本で言うと『7つの習慣』、まあロングセラーですが、本の中では「理解してから理解される」という表現をされていますが、まず相手のことをきちんと理解しようと受け止めて話を聞く。そうすると、相手もかなり聞いてくれます。

この時点でですね、関係性自体はかなり良くなっています。実際に例えば、上司が9時に会社に来ないという現象自体は変わらないかもしれませんし、もしかしたら変わるかもしれないのですが、自分自身のストレスだったりとか、仕事のしやすさだったりとか、実際に起こっている迷惑とか不利益のようなこと自体は、かなり減らせるということが起こったりします。

これが聞くということです。

右脳的に(母性的に)聞く

もう1つ、最初に少し2つあると申し上げましたが、もう1つの聞き方があります。

これは典型的に強調して言うと、男女で言うと女性の話を聞くときによくあるモードです。これはあの、現状では本当に男女差別だとすぐに炎上してしまうので、丁寧にお伝えしたいのですが、すべての女性がそうだというわけではなく、いわゆる「男性性」「女性性」というのは男性にもありますし、女性にもありますし、女性性が強い男性ももちろんいらっしゃったりとか色々なケースがあるので個別性が高いのですが、ここで言っている女性においては、比較的女性性の強いコミュニケーションであると捉えていただければと思います。

右脳的に聞く
  • STEP1
    相手の気持ちを聞く

    どのような考えであるのかを、しっかりとまず聞く

  • STEP2
    気持ちが生じた状況を聞く

    その相手の意見の基盤となる考え方や価値観が、なぜその意見になっているのかという「なぜ」というところを聞く

  • STEP3
    具体的にどうしてほしいのかを聞く

    さらにその考え方や価値観が生じてきた背景や体験のようなものを聞く

STEP1:相手の気持ちを聞く

(女性性の強い)そのときの聞くというのは、最初が相手の意見を聞く、「こうこうこうで…こう考えています」という意見を聞くのではなく、まず相手の気持ちを聞いて受けとめる。このようなコミュニケーションが効果的なことも多いです。「結局何?どうしてほしいの?」というようなことではなく、どのような気持ちでいるのか?ということですね。

これで言うと、例えばですが、先ほどの例で言うと上司と部下の立場を逆転して話してしまいますが、「どのような気持ちなの?」と尋ねます。

「いや、正直すごくイライラします。ルールを守らない人がいて、すごくイライラもするし、イライラしている自分も悲しくなってしまうし、なぜこんなルールを守らないのだろう。本当に嫌だな」というような気持ちです。

「そうか、イライラさせてしまっているのだね。悲しい思いをさせているのだね。イライラしているのか。そうかそうか…」まあ「ごめんね」という気持ちが湧いてきたら素直に言っても良いと思いますが、別にここで謝らなければならないわけではないので、「ああ、イライラしているのだね」ということですね。この気持ちを受けとめるということになります。

STEP2:気持ちが生じた状況を聞く

ステップ2は、気持ちが生じた状況について聞きます。

今回のケースだと、上司は自分が遅刻してきているというのをまあ明白かもしれませんけれど、「今、悲しいとか辛いとかイライラしているとか、その気持ちはどういう状況で起こってきたの?」ということを聞きます。

これはどちらかというとパートナーとか友達のほうがイメージしやすいかもしれませんが、まあそれを聞きます。今の例で言うと、「人がルールを守っていないシチュエーションがあるとイライラするのです」と答えます。で、これは上司であるあなたが遅刻してきているケースもそうですが、例えば他のこういうケースとかでも「なぜルールを守らないのだろう」といってイライラすることがあります。こういうケースもあります、こういうケースもあります、ということを聞きます。「そういうケースもイライラするんだ。なるほどね」と。

そこまで「なるほどね」という受けとめがあるだけで、「そうなんです。私はこういうのはすごくイライラして、きちんと大切にしてほしいのです」ということが、聞こうとしてくれているのだな、受け止めようとしてくれているのだなということが伝わるというような接し方・コミュニケーションの仕方がすごく大事です。

STEP3:具体的にどうしてほしいのかを聞く

最終的に、ではそれは具体的にこちらにどうしてほしいのかも、ちょっとそれはそれでできるかどうか約束は今の段階ではできませんが、具体的にどうしてほしいのかも少し教えてもらえますかという話をします。

この前の2ステップですね。まず気持ちを聞いて、気持ちが生じた状況も聞いて、ということをきちんとできていると、かなり冷静に落ち着いて、「いや、本当はこうしてほしいのです」という話をしてもらえます。

これが前の2ステップを飛ばしていると、すごくヒステリックな意見だったりとかですね、すごく逆に抽象的すぎて、どうして良いかわからない意見のようなものが出てきてしまって、取り付く島もないようなことも起こったりしますので、最初の2ステップをきちんと踏んでから、「具体的にどうしてほしいの?」というのを聞きます。そうすると、これも少し前の例で出しましたが、「きちんとコミュニケーションを取れるようにしてほしい」というようなことかもしれませんし、そもそもルールを守るということを大事にしたいし、守らなくて良いルールなのだとしたら、もううちの会社の就業規則として「9時に必ず出社です」ということ自体をきちんと変えませんか、と。

「ルールじゃないんだったら私も気にならないので、ルールだと言うんだったら、きちんとこれは意味があってルールがあるから、みんなで守りましょう」ってしたいです。「確かにね」と。これは自分のわがままだけのように私だけルールを逸脱して勝手にやっているようになっているのは確かに健全ではないから、会社の就業規則そのものとして見直すようにこれはプロジェクトとして動かしていきましょう、みたいになるかもしれません。

これはもちろん、今は上手くいく例として話していますので、現実ではそんなに簡単に上手くいくとも限りませんが、こういったコミュニケーションの技術を高めていくことによって、きちんと自分の考えも伝えられる、相手の考えもきちんと聞ける。そして、お互いを尊重した状態として、大切にした状態として、ではどうしたら良いでしょうかという話し合いができます。

なので、伝える方ももちろんですが、聞く方もですね、これはかなり技術やスキルだったりするので、意識して高めていただいて、本当に大調和で過ごせるようになると、すごくストレスが少なくて楽なので、それにいけるようにスキルを高めていただければと思います。

相手の考えや想いを「聞く」のときに大事なことは

  • 「聞く」ときには、いったん自分の意見は置いておき(保留にして置き)、相手を理解しようという姿勢で聞くことが大事
  • 一方で、これは意見に賛成するということではありません、意見は異なっているのは構いません
  • 聞く方法としては、左脳的に「まず意見を聞いて、その意見の背景にある価値観を聞いて、さらにその価値観を生じさせた体験を聞く」という方法や、「まず気持ちを聞いて、どうしてその気持ちが生じたのかの状況を聞いて、具体的にどうしてほしいのかを聞く」方法などがある
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