起きている時間の半分を占める仕事を「耐える時間」にしないためのキャリア論

この記事は約7分で読めます。

私たちが起きている時間の、およそ「半分」あるいはそれ以上を占めているもの。それが「仕事」です。

1週間(168時間)の過ごし方をあらためて計算してみたとき、この膨大な時間がもし「つらい」「耐え忍ぶ」だけのものであったら、人生の豊かさはどこへ行ってしまうのだろう——そんな疑問を持ったことが、私のキャリアの出発点でした。

今回は、人生の大きな割合を占める仕事を「耐える時間」から「納得と充実の時間」に変えていくための、2つの視点について書いてみたいと思います。

充実したキャリアを築くための二大要素

起きている時間の半分を、どう過ごすか?

私たちが社会人として過ごすとき、時間の比率はどうなっているでしょうか。

1週間は「24時間×7日間=168時間」です。そのうち、一般的に起きている時間の半分くらいは仕事をしているという計算になります。仮に週に40時間だとしても、残業や通勤・移動時間を含めれば、実際にはもう少し多くの時間が費やされます。つまり、私たちが起きている時間の半分、あるいはそれ以上は、仕事に費やされているのです。

この事実を真剣に眺めてみたとき、ひとつの問いが浮かびます。

もし、この起きている半分の時間が「つらい」「つまらない」「嫌な」時間だとしたら、私たちの心はそれに耐えられるでしょうか?

定年退職までの約40年間、「できれば仕事などしたくない」という耐え忍ぶような状態で日々を過ごすのは、自分にとって避けたいことでした。起きている時間の半分を占めるものだからこそ、それが充実した、納得のいくものであるようにしたい。そう考えたのが、キャリアと向き合う出発点でした。

充実したキャリアを築くための「二大要素」

いろいろな本を読み、自分なりの考えを深めていく中で、大きな影響を受けた教えのひとつに、ハーバード大学のタル・ベン・シャハー教授の提唱する考え方があります。

教授によれば、充実したキャリアを築くためには2つのポイントがあるといいます。

  1. 仕事をする意義や意味を持っていること
  2. 仕事に集中できている/没頭できている状態であること

この二つの軸に沿って自分なりのキャリアをつくってきたとき、私自身、非常に充実した軌跡を描くことができたと感じています。それぞれの内側を少し紐解いてみましょう。

① 仕事をする意義や意味を持っていること(Whyの探求)

ひとつめの「意義」とは、いわゆる Why のことです。「何のために仕事をするのか」という問いに対し、自分なりの意味や価値を見出せているかどうかは、キャリアの質を決定づける非常に大きな要素です。

みなさんは、「自分は何のために仕事をしているのか」と問われたとき、心からの納得感を持ってスッと答えられるでしょうか?

これに正解はありません。他人がどう評価するかではなく、「自分にとってこれが大切だ」という腹落ち感があるかどうかです。ここで、よく引き合いに出される「3人のレンガ積み職人」の話を思い返してみます。

  • 1人目の職人: 疲れ切った様子で、面白くなさそうに答えます。「見れば分かるだろう…親方の命令でレンガを積んでいるんだ」
  • 2人目の職人: わりと元気そうに答えます。「仕事で教会を建てているんです」
  • 3人目の職人: 目を輝かせ、イキイキとした表情で答えます。「地域の未来につながる、みんなが集まれる素晴らしい教会の場所を造っているんです」
Photo by 写真AC様

違うのは、「何のためにやっているのか」を自分なりに語れる度合いです。

1人目は「やらなきゃいけないからやっている」世界にいます。3人目は、いまの仕事がどんな意味や意義につながっているのか、自分なりの考えを持っています。これが充実したキャリアにとって重要で、そして意外と難しいことでもあります。

もう一度、先ほどの問いに戻ってみてください。
「いま、あなたは何のために仕事をしていますか?」

私は研修やコンサルティングでいろいろな会社の方とお会いして、この話をしてきました。すると、多くの方がこう答えます。

  • 「考えたこともなかった」
  • 「やらなければいけないから、仕事は」
  • 「お金を稼ぐこと以上のことは、イメージしたことがない」

一方で、こんなふうに語る方もいます。

  • 「この仕事が社内のこういうことに役立っているから」
  • 「お客さまにこう喜ばれるから」
  • 「自分の人生にこういう目標があって、それにつながっているから」
  • 「会社を超えて、社会に○○な状態をつくりたいから」

どれが正しいということはありません。ただ、「充実したキャリアを築く」という観点では、自分なりに考えて、自分が納得できるものを持てていることが大切です。

私自身も、何のために仕事をしているのかをずっと考えてきました。ひとつ申し上げておくと、その答えは変わってもいいものです。20代の頃の仕事の意味と、30代、40代、50代、60代…と歳を重ねたり、ライフステージが変わったりしたときの意味が違っても、まったく問題ありません。

大切なのは、「いまの自分」が腹落ちしているかどうかです。「だから自分は頑張っているんだ」という理由を持っていること自体が、仕事の時間を支えてくれます。その理由は人それぞれでいいし、同じ仕事を続けていても、年齢や環境とともに変わっていっていいのです。

② 仕事に集中できている/没頭できている状態であること(フローの探求)

ふたつめの要素は、仕事に深く没頭できている状態です。

例えば、「お客さまのための資料作りに夢中になっていたら、気づいたら夕方になっていた」「対話に没頭していたらあっという間に時間が過ぎていた」といった、時間を忘れてしまうような没頭の体験です。

この状態を生み出す上で鍵になるのが、心理学者チクセントミハイ教授の「フロー体験理論」です。人間の集中力は、環境の難易度と自身のスキルのバランスによって大きく左右されます。

  • 難しすぎることに直面しているとき: 不安が強くなり、焦りや恐れから集中できなくなる。
  • 簡単すぎることに直面しているとき: 退屈が生まれ、心が離れてしまう。

充実したキャリアを築く上では、「自分にとって最も適切な難易度のチャレンジ」を日々行えていることが非常に重要です。

私の場合、忙しい1ヵ月などに、難易度が自分にとって高すぎると感じると、不安が強くなってきます。「大丈夫かな」「ちゃんとこなせるかな」と気になって、集中が途切れてしまうのです。今日1日分のことさえ終わるのかどうか分からない、という不安の中では、なかなか集中できません。

そんなときは、朝にその日のタスクを確認し、「これは今日は終わらないかもしれない」というものを、あらかじめ後ろ倒しにすると決めています。この調整を先にやってしまうのです(もちろん、今日が締切の仕事は後ろ倒しにしません)。

「今日はこの範囲でOK」と見えてくると、「よし、頑張ろう」と集中できます。

そして、集中して過ごした日の充実感や快感は、やはり格別です。1日を終えて「今日は頑張ったな」と感じるのは、「なんとか頑張れば終わりそう」という絶妙なラインのことをやり遂げたときだと思います。

  • いま、自分の仕事に対して「不安」を感じているのか、「退屈」を感じているのか?
  • 不安が強いなら、どうすれば難易度や負荷を調整できるか?
  • 退屈しているなら、より質を高めるためにどんな新しい工夫や難しさに挑めるか?

こうした心の状態をこまめに観察することも、内側を観る大切な営みです。

総括

私たちの人生において、「仕事」という営みが占める時間はあまりにも巨大です。だからこそ、その時間をただ過ぎ去るものや「耐える時間」にしてしまうのは、あまりにももったいないと感じます。

外側の評価や環境に振り回されそうになったときこそ、一度立ち止まって自分の「内側」に意識を向けてみてください。

ここに挙げた二つの要素――「仕事の意味や意義を持つこと」と、「適切な難易度で没頭・集中すること」は、決して特別な才能が必要なものではありません。

  • 「私は今、何のためにこの仕事をしているのだろうか(Why)」
  • 「いまのチャレンジは、自分の心にとって適切な難易度だろうか(Flow)」

働く意味は、ライフステージや心の変化とともに変わっていって構いません。大切なのは、「今の自分が、納得してその時間を生きているか」という問いをあきらめないことです。

今日の帰り道や一日の終わりに、ご自身の内側の声にそっと耳を傾けてみませんか。あなたの仕事の時間が、少しでも本質的に豊かな体験へと変わっていくことを願っています。

動画でも学べる!

充実したキャリアをつくるために大切な2つの考え方
タイトルとURLをコピーしました