第1回、第2回と、パートナーシップにおける「距離の技術」や「人によって愛を感じるポイントが異なる5 Love Languages(5ラブランゲージ)」、そして「変化と選択」についてお伝えしてきました。
最終回となる今回は、パートナーとの間に生じる問題の裏にある「心理学的な投影」と、豊かな関係性を育むための自分自身の「あり方」について深掘りしていきます。
前回の記事 ↓

第3回【内省と本質】パートナーは自分の投影? 最高の関係を育む「感謝とあり方」
多くのパートナーシップの問題は「投影」から生じている
ここまで「よいパートナーシップを育む」という観点で整理をしてきましたが、実際問題としては、パートナーとの間には問題や試練が山ほど起きます。辛いを通り越して、思わず笑ってしまうほどです。
私自身、自分のパートナーシップに向き合い続けていますし、ご縁あって多くの方のパートナーシップ相談にも乗ってきました。
そうして多くのケースに触れて感じたのは、ほとんどの問題に心理学でいういわゆる「投影」が関連しているということです。
- 自分とお父さんとの関係における課題が、夫との関係に現れる
- 自分とお母さんとの関係における課題が、妻との関係に現れる
これは非常によく起こる現象です。(「父→夫」というケースが多いですが、「父との関係が妻に出る」といったことも普通に起こります。)

例えば、お父さんが支配的で「怖い」という強烈な記憶を持っているとします。
そうすると、無意識のうちに夫に対しても「危ないから油断してはいけない」「安心しきってはいけない」「暴力的で軽蔑すべき存在だ」と思い込んでしまったりするのです。自覚している場合もあれば、無意識レベルのこともあるので少々厄介です。
逆にお父さんが「弱くて情けない」という印象になっているケースもあります。
いつもお母さんの方が強くて「お父さんは本当にダメね」と言われても反論できない父。リスペクトがないお母さんにも嫌悪感があるし、反論できない情けないお父さんにも嫌悪感がある。
そうするとその反動で、妻に対していつも尊大な態度を取り、少しでもプライドを傷つけるようなことを言われると激高してしまう……という形で現れることもあります。
この問題に対する王道のアプローチは、「自分自身の親との関係を見つめ直す」ということです。
もちろん「親との関係は置いておいて、今目の前にいるパートナーとしっかり向き合う」というアプローチもあります。
私自身の実体験としては前者のアプローチが効果的だと感じることが多いですが、それは私自身の個性も影響しているかもしれないので、常にそれが正解とは言えません。
しかし、親子関係を解きほぐすエッセンスは非常に大きなヒントになります。

「過去は変えられない」が、「過去への認識」は変わる
まず親子関係においても、5 Love Languages(5ラブランゲージ)のズレは見てみることです。

「子どもの頃の自分は一緒に過ごす時間が欲しかったけれど、お父さんは稼いで養うという『奉仕』こそが愛だと思っていたんだな」
そう気づくだけで、認識がガラリと変わってしまうことがあります。
愛を欲しい形でもらえていなかった時、子どもは「私は愛されていなかった」と思い込みます。
しかし大人になって、愛し方の形には色々なものがあると分かると、「欲しい形でもらえていなかっただけで、本当は深く愛されていたんだ」と認識が変わるのです。
よく「過去は変えられない」と言いますが、「過去に対する認識が変わる」ということは確かに起こります。これは非常に重要なポイントです。
自分はお父さんから言葉や褒め言葉が欲しかった。スキンシップや抱っこが欲しかった。一緒にして遊ぶ時間が欲しかった。でもそれらは全然もらえず、冷たいお父さんだと思っていた。
でもお父さんは「奉仕」をしてくれていた。朝から晩まで働いて学費を稼ぎ、誕生日には「これが欲しかっただろう!」と豪華なプレゼントを必ずくれた。
欲しいものをもらえなかった当時の自分は「プレゼントで誤魔化して!こんなものいらない!」とプレゼントを投げ捨て、お父さんに悲しい顔をさせたことがあった……。
そう振り返ってみると、今、目の前のパートナーとの関係においても、ほぼ同じパターンが繰り返されて出現していることに気づくことがあります。
ケースバイケースなので単純化はできませんが、例えば親に対して「一緒に遊んでほしくてプレゼントを投げ捨てて悲しませたけれど、ごめんね。朝から晩まで働いて学費を払ってくれてありがとう」と思えたり伝えられたりすると、それだけで親との関係が変わります。
そして親との関係が変わると、不思議なことに目の前のパートナーの見え方や関係性にも変化が生じてくるのです。
「よい関係性」の形は、それぞれでいい
最後に。
素晴らしいパートナーシップの形は、本当に人それぞれです。
第2回でご紹介した「幸せな夫婦に関する調査」のように、会話量が多くても不幸せなカップルもいれば、会話量が少なくても満たされているカップルもいます。
共通の趣味を楽しむ関係もあれば、趣味がまったく違う関係もあります。一緒に暮らすのが幸せな夫婦もいれば、週末婚や通い婚のような形態がぴったりだという二人もいます。
「こうでなければならない」「こうしないと上手くいかない」という万人に共通する正しい形はありません。「今の二人にとってこれが最高」と思えるものが、最高なのです。
「これだけは」と言えるものがあるとしたら、やはりこれに尽きます。
「自己評価より、相手からの評価の方が高い。お互いに。」
相手に対していつも感謝の気持ちを持ち、相手の素晴らしいところを見つめている。それがあれば、会話の多寡や趣味の有無、同居の形態に関わらず、二人にとって最善の形であれば何だっていいのです。
感謝に関して、面白い研究があります。
「ありがとう」と言われる側が嬉しいのはもちろんですが、実は「ありがとう」を言う側の幸福度にも大きなプラスの影響があることが、心理学者のマーティン・セリグマンらの研究で実証されています。
パートナーに対して「ありがたいなぁ」「こんな素晴らしい人と一緒にいられて自分は幸せ者だな」と思えていたら、それ自体が本当に幸せなことですよね。
もちろん人間ですから、相手に対して「もっとこうして欲しい」「これはやめて欲しい」と思うこともあります。それをゼロにするのは不自然ですし、抑圧してしまっては幸せから遠ざかります。
しかし、「良いところにフォーカスする」ということはトレーニングできますし、それを行うだけの十分な価値があります。
「世の中が悪い」「上司のせいだ」と他責的に愚痴ばかり言っている人と、「この前も助けてもらった」「美味しくて幸せだった」と良いところを見つけて感謝できる人。どちらが幸福に過ごせるかは目に見えています。
パートナーシップもまた、外側のテクニックだけでなく、自分自身の「あり方」によっていくらでも豊かに育んでいけるものなのです。
総括
全3回にわたる「パートナーシップ」の探求、いかがだったでしょうか。
『パートナーシップとは「自分自身の内面」を映し出す鏡』
パートナーシップは、私たちの人生において「最も距離が近い人間関係」です。
距離が近いからこそ、そこには技術が必要であり、お互いの「違い」や「プロトコルのズレ」が生じ、時に激しい衝突や悩みが生まれます。
しかし、その衝突や違和感を「相手が間違っているから」と攻撃したり、「言っても無駄だ」と諦めて飲み込んだりするのではなく、一歩立ち止まって「よく観る」こと。
- 相手を観る: 相手がどのようなプロトコル(5LoveLanguages)で愛を表現し、何を大切にしているのか。
- 関係性を観る: 夫婦の幸せは「会話の量」や「共通の趣味」ではなく、「お互いへの尊敬と感謝(相手からの評価が高い状態)」にあるということ。
- 自分の内面を観る: パートナーに感じている怒りや恐れは、自分自身の幼少期や「親との関係(投影)」から来ていないか。
外側の社会システムや生活環境の中で生きつつも、自分自身の深層心理やあり方を見つめ直す。 パートナーシップの課題に向き合うプロセスそのものが、自分自身を深く知る「学びの場」となります。
『完璧な形を目指すのではなく、お互いの「あり方」を育む』
万人に共通する「正しいパートナーシップの形」はありません。
一緒に暮らす形も、距離の取り方も、時代や年齢とともに変化していくお互いの価値観をどう取り扱うかも、二人にとって最善であれば何だっていいのです。
変化を恐れず、常に丁寧に違いを取り扱い続けること。 そして、目の前のパートナーに対して「ありがたいなぁ」と感謝できる自分自身のあり方を育んでいくこと。
それが、結果として人生全体を本質的に豊かなものへと導いてくれます。
「子どもの頃の自分は一緒に過ごす時間が欲しかったけれど、お父さんは稼いで養うという『奉仕』こそが愛だと思っていたんだな」
そう気づくだけで、認識がガラリと変わってしまうことがあります。
愛を欲しい形でもらえていなかった時、子どもは「私は愛されていなかった」と思い込みます。
しかし大人になって、愛し方の形には色々なものがあると分かると、「欲しい形でもらえていなかっただけで、本当は深く愛されていたんだ」と認識が変わるのです。
よく「過去は変えられない」と言いますが、「過去に対する認識が変わる」ということは確かに起こります。これは非常に重要なポイントです。
自分はお父さんから言葉や褒め言葉が欲しかった。スキンシップや抱っこが欲しかった。一緒にして遊ぶ時間が欲しかった。でもそれらは全然もらえず、冷たいお父さんだと思っていた。
でもお父さんは「奉仕」をしてくれていた。朝から晩まで働いて学費を稼ぎ、誕生日には「これが欲しかっただろう!」と豪華なプレゼントを必ずくれた。
欲しいものをもらえなかった当時の自分は「プレゼントで誤魔化して!こんなものいらない!」とプレゼントを投げ捨て、お父さんに悲しい顔をさせたことがあった……。
そう振り返ってみると、今、目の前のパートナーとの関係においても、ほぼ同じパターンが繰り返されて出現していることに気づくことがあります。
ケースバイケースなので単純化はできませんが、例えば親に対して「一緒に遊んでほしくてプレゼントを投げ捨てて悲しませたけれど、ごめんね。朝から晩まで働いて学費を払ってくれてありがとう」と思えたり伝えられたりすると、それだけで親との関係が変わります。
そして親との関係が変わると、不思議なことに目の前のパートナーの見え方や関係性にも変化が生じてくるのです。
「よい関係性」の形は、それぞれでいい
最後に。
素晴らしいパートナーシップの形は、本当に人それぞれです。
第2回でご紹介した「幸せな夫婦に関する調査」のように、会話量が多くても不幸せなカップルもいれば、会話量が少なくても満たされているカップルもいます。
共通の趣味を楽しむ関係もあれば、趣味がまったく違う関係もあります。一緒に暮らすのが幸せな夫婦もいれば、週末婚や通い婚のような形態がぴったりだという二人もいます。
「こうでなければならない」「こうしないと上手くいかない」という万人に共通する正しい形はありません。「今の二人にとってこれが最高」と思えるものが、最高なのです。
「これだけは」と言えるものがあるとしたら、やはりこれに尽きます。
「自己評価より、相手からの評価の方が高い。お互いに。」
相手に対していつも感謝の気持ちを持ち、相手の素晴らしいところを見つめている。それがあれば、会話の多寡や趣味の有無、同居の形態に関わらず、二人にとって最善の形であれば何だっていいのです。
感謝に関して、面白い研究があります。
「ありがとう」と言われる側が嬉しいのはもちろんですが、実は「ありがとう」を言う側の幸福度にも大きなプラスの影響があることが、心理学者のマーティン・セリグマンらの研究で実証されています。
パートナーに対して「ありがたいなぁ」「こんな素晴らしい人と一緒にいられて自分は幸せ者だな」と思えていたら、それ自体が本当に幸せなことですよね。
もちろん人間ですから、相手に対して「もっとこうして欲しい」「これはやめて欲しい」と思うこともあります。それをゼロにするのは不自然ですし、抑圧してしまっては幸せから遠ざかります。
しかし、「良いところにフォーカスする」ということはトレーニングできますし、それを行うだけの十分な価値があります。
「世の中が悪い」「上司のせいだ」と他責的に愚痴ばかり言っている人と、「この前も助けてもらった」「美味しくて幸せだった」と良いところを見つけて感謝できる人。どちらが幸福に過ごせるかは目に見えています。
パートナーシップもまた、外側のテクニックだけでなく、自分自身の「あり方」によっていくらでも豊かに育んでいけるものなのです。
総括
全3回にわたる「パートナーシップ」の探求、いかがだったでしょうか。
『パートナーシップとは「自分自身の内面」を映し出す鏡』
パートナーシップは、私たちの人生において「最も距離が近い人間関係」です。
距離が近いからこそ、そこには技術が必要であり、お互いの「違い」や「プロトコルのズレ」が生じ、時に激しい衝突や悩みが生まれます。
しかし、その衝突や違和感を「相手が間違っているから」と攻撃したり、「言っても無駄だ」と諦めて飲み込んだりするのではなく、一歩立ち止まって「よく観る」こと。
- 相手を観る: 相手がどのようなプロトコル(5LoveLanguages)で愛を表現し、何を大切にしているのか。
- 関係性を観る: 夫婦の幸せは「会話の量」や「共通の趣味」ではなく、「お互いへの尊敬と感謝(相手からの評価が高い状態)」にあるということ。
- 自分の内面を観る: パートナーに感じている怒りや恐れは、自分自身の幼少期や「親との関係(投影)」から来ていないか。
外側の社会システムや生活環境の中で生きつつも、自分自身の深層心理やあり方を見つめ直す。 パートナーシップの課題に向き合うプロセスそのものが、自分自身を深く知る「学びの場」となります。
『完璧な形を目指すのではなく、お互いの「あり方」を育む』
万人に共通する「正しいパートナーシップの形」はありません。
一緒に暮らす形も、距離の取り方も、時代や年齢とともに変化していくお互いの価値観をどう取り扱うかも、二人にとって最善であれば何だっていいのです。
変化を恐れず、常に丁寧に違いを取り扱い続けること。 そして、目の前のパートナーに対して「ありがたいなぁ」と感謝できる自分自身のあり方を育んでいくこと。
それが、結果として人生全体を本質的に豊かなものへと導いてくれます。
連載記事一覧(バックナンバー)
第1回【関係性の前提】「愛し合っていれば大丈夫」の幻想を捨て、距離の技術を学ぶ

第2回【違いの取り扱いと変化】日常のズレをどう乗り越え、関係性を深めるか


