「恵まれているのに、なぜかしんどい」の正体——人生を静かに止める「思い込み」の心理学

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「最近、仕事が頑張れない」
「別に困ってはいないのに、なぜか満たされない」

そう感じるとき、私たちはつい「自分の努力が足りないのかも」「仕事が合っていないのかも」と、目の前の原因を探します。でも、今までのやり方で改善できないことほど、本当の原因は、もっと深いところにあることがあります。

その一つが、自分でも気づかないうちに抱えている「思い込み」です。

前編では、これまでご相談にのってきた経験から、思い込みがどのように生きづらさにつながるのかをお話しします。後編では、その思い込みとどう向き合うかをお伝えします。

前編:
なぜ「一見幸せな人」ほど人生が停滞するのか?

順調に見える人にも起こること

もし自分が誰の目から見ても「人生のどん底」にいるような分かりやすい状況であれば、「人に相談してみよう」とか「プロのカウンセラーのところに通って内面を見てみよう」と思えるかもしれません(本当にどん底のときは、それすら難しかったりもしますが)。

しかし、思い込みによる生きづらさは、いわゆる「辛く不幸な状況にいる人」だけに起こるわけではありません。

むしろ、ごく普通に、そこそこ上手くいっていて、周りから見れば「羨ましい」と思われるような生活をしている人にこそ、静かに生じることが多いのです。

  • 仕事があって収入もあり、経済的には困っていない
  • 家庭があり、パートナーやお子さんと楽しそうに過ごしているように見える
  • それでも内面では、「なんかしんどいな」「行き詰まっているな」と感じている

そして、今までのやり方でなかなか改善できないことほど、ご本人が「これが問題だ」と自覚している目の前の事柄ではなく、もっと根っこにある思い込みが元凶だった、ということが少なくありません。たくさんの方のご相談にのる中で、しみじみとそう実感しています。

事例:「仕事のやる気が湧かない」の本当の正体

ここで、私が過去にお伺いしてきた複数のご相談を組み合わせた、よくある一つの像をお話しさせてください。

「仕事のやる気がいまいち湧かない。10年〜20年と仕事を頑張ってきたし、結構稼げてもいるけれど、最近なぜか楽しくない」というお悩みです。

心理学で言われる「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」に近いものかもしれません。20代〜30代の頃は、目の前にやるべき課題がはっきりしていて、それに取り組んでいれば成長実感も充実感もありました。

しかし、それをひと通り乗り越え、立場が上がり、責任の範囲が広くなったとき、「自分は次に何を目標にして頑張ればいいんだろう」と立ち止まってしまうのです。

このとき、多くの方は「これまでの成功体験」を再現しようとします。 新しい仕事の目標を設定し、やったことがない領域にチャレンジしてモチベーションを上げようとするわけです。

Photo by ぱくたそ様

ですが、以前のようには続きません。 すぐに仕事に慣れてしまい、できるようになってしまう。そしてまた「この先、何を頑張ればいいんだろう」というループに戻ってしまうのです。

ご本人は「これは仕事上の目標設定の問題だ」と思っています。 しかし、その方の「思い込み」を丁寧に紐解いていくと、一番のベースにあるのは「パートナーシップや結婚、家族と生きる幸せ」に対する強いブレーキや思い込みだったりします。

人間、自分のためだけに仕事を頑張り続けることには、どこかで限界がきます。 家族ができたり、子どもが生まれたりすると、「よし、学費のために稼ごう」「家族を旅行に連れていきたいな」と、仕事にメリハリや目的が自然と生まれることがあります。

しかし、根っこの部分で「自分は幸せな家庭を持つべきではない」「パートナーシップを築くのが怖い」といったブレーキがあると、その巡り回った影響が、なぜか「仕事のモチベーションが湧かない」という形であらわれてしまうのです。

本人は仕事の問題だと思っているけれど、本当の元凶はまったく別の場所にある。 これが「思い込み」の恐ろしさであり、扱いづらさです。

「自分も同じような停滞感を感じているかもしれない」と思い当たる節はなかったでしょうか。

自分を守るために作ったはずの「思い込み」が、気づけば自分自身を縛る枠組みになってしまう。そして私たちは、その根本的な原因から目を背けるために、ある無意識の「蓋」をしてしまっています。

では、なぜ私たちはその原因に「蓋」をしてしまうのでしょうか? そして、どうすればその蓋を安全に開け、思い込みから解放されて「自分本来の個性」を生きられるようになるのでしょうか。

後編:
封印した感情を「よく観る」ことで、本来の自分を取り戻す

前編では、一見順調に見える人ほど「根っこの思い込み」によって人生が停滞しやすいこと、そして本人が思っている問題(仕事など)とは全く別の場所(パートナーシップなど)に原因が隠れていることが多い、というお話をしました。

自分の内側にある「思い込み」に気づき、それを手放していくためにはどうすればいいのか。今回はその具体的なプロセスの話に入っていきます。

「もう処理できた」という蓋の正体

自分の内面を取り扱うことについて、すでに本を読んだり、セミナーに通ったり、プロのセッションを受けたりして「自分なりに取り組んできました」とおっしゃるケースもよくあります。

「自分としては、過去のトラウマや悩みはもう消化できています」

そうお話しされるのですが、詳しく聞いていくと、申し訳ない言い方になってしまうのですが「処理できたのではなく、辛いから蓋をして封印しただけ」という状態になっていることが非常に多いのです。

ですが、そうやって蓋をしてしまう気持ちは、私自身も本当にによく分かります。

多くの場合、原因は幼少期や過去の辛い体験にあります。そんな悲しい思い出や傷ついた記憶をわざわざ掘り返して、もう一度辛い思いをするなんて、誰だってしたくありません。

封印しておいて「もう解決済みのこと」として置いておきたいと思うのは、人間としてごく自然な防衛反応です。

しかし、「なぜかモチベーションが湧かない」「どうしてもこの停滞から抜け出せない」というとき。 それは、一度封印したものの蓋をそっと開けて、もう一度丁寧に扱い直してあげるタイミングが来ているというサインなのです。

ここを避けないでちゃんと取り組むと、驚くほど現現実の状況がスルスルと動き始めます。 「ここに取り組んでいなかったから進まなかったんだな」と、私自身もたくさんの現場で実感してきました。

思い込みを解く「感情の再体験」プロセス

では、どうやって思い込みの元となった過去の体験に取り組んでいけばいいのでしょうか。

細かい技術的な話はまた別途お伝えできればと思いますが、基本となる大切なステップは「事実を思い出し、そのときの感情を味わい直すこと」です。

  1. 当時の事実をただ思い出す どのタイミングで、どんな出来事があったのかをじっくり思い出していきます。
  2. 封印していた感情を取り出す 味わいたくなくて蓋をしたネガティブな感情(怒り、悲しみ、辛さ、寂しさ)を引っ張り出してきます。
  3. 「本当に嫌だった」「辛かった」と味わい直す 「本当はすごく嫌だったんだな」「あのとき、自分は本当につらかったんだな」と、その感情を否定せずにしっかり感じてあげます。

このプロセスを進んでいくと、人によっては涙があふれて止まらなくなるようなことが起こります。 決して楽しい作業ではありませんし、一時的にしんどさを伴うこともあります。

しかし、その感情をしっかりと通過(通過)させてあげることで、心の中にあった滞りが綺麗に「浄化(カタルシス)」されていきます。

仕事では順調だが停滞感のあったTさんがひとつ自分の思い込み(強い固定観念)に気付いた例

思い込みに自分ひとりで気づくのは難しい。人と話す中で自分の思い込みと気づけて、変化があったTさんの例

総括

思い込みから解放され、本来の個性を生きる

このプロセスを終えると、今まで見ていた世界の見え方や捉え方が、まるで景色が変わったかのようにガラリと変わります。

長年自分を縛り付けていた「思い込み」がすーっと溶けていき、誰かの価値観ではなく、本当の自分自身の「個性」や「本質的な価値観」を生きていけるようになるのです。

思い込みを適切に取り扱うことには、確かに難しさや痛みが伴います。 けれど、それを行う価値は間違いなくあります。

今すぐ本格的なワークに取り組まなくても、「そうか、自分の停滞には何か根っこの思い込みがあるのかもしれないな」と知識として知っておくだけでも、大きな一歩です。

もし「自分も本気で向き合ってみたい」と思われたときは、世の中にあるたくさんの本を参考にしたり、信頼できるプロのセッションを活用しながら、焦らずご自身のペースで進めてみてください。

自分の内側を「よく観る」こと。 そこから、あなただけの本質的に豊かな人生が始まっていきます。

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人生に大きな影響を与える「思い込み」とは?どう対処したらいい?
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