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仕事をしている時間は人生でどのくらいの割合を占めているのか?
充実したキャリアについて、まずは自身の経験みたいなところを少しお話させていただきたいと思います。自分が社会人になるにあたって、社会人として過ごす時間をいかに充実したものにしていくかということは、私自身 非常に考えたところでした。
1週間は、24時間×7日間=168時間あるわけですが、168時間のうち、一般的に起きている時間の半分くらいは仕事をしているという計算になります。1週間に、仮に 8時間×5日間=40時間は仕事をしていたとして、実際はそれに残業や移動時間を含め、もうちょっとの時間を仕事に費やすことが多い。とすると、起きている時間の半分~半分以上は、仕事に時間を費やしているということを、真剣に1度考えてみたのです。
そしてこうやって考えてみたときに、この起きている半分の時間が、「つらい」「つまらない」「嫌な」時間だというのは、ちょっと自分には耐えられないなと思いました。
定年退職まで、60歳なのか、65歳なのか、40年くらいの時間があったとき、基本的には仕事したくないんだけどなという状態で仕事をするというのは自分としては避けたい、起きている時間の半分の時間も使うわけですから、それが充実したものである/楽しいものであるという風に過ごせるようにしたいなと考えていました。
充実したキャリアを築くための二大要素とは?
いろいろな本を読んだり考え方を調べたりしてきて、その中のひとつで影響を受けたものが、ハーバード大学 タル・ベン・シャハー『ハーバードの人生を変える授業』です。
タル・ベン・シャハー教授の言っている内容に、ひとつ大きな影響を受けていて、それの考えに則って自分なりのキャリアをつくってきたときに、私自身は非常に充実したキャリアをつくってこれたと感じているので、今回はそれについてご紹介してみたいと思います。
タル・ベン・シャハー教授は、充実したキャリアをつくるには2つポイントがあるとお話されています。
- 仕事をする意義や意味を持っていること
- 仕事に集中できている/没頭できている状態であること
それぞれ詳しく解説していきます。
仕事をする意義や意味を持っていること
ひとつめの「意義」については、これはいろいろな言い方をされることがありますが、Why / What / How でいったときの、「Why」のことです。「何故 仕事をするのか」「何のためにやるのか」、Whyが大事だという言い方をすることがビジネスではよくありますが、自分なりに仕事をやる意味や意義・価値を見出していられているかどうかは、充実したキャリアをつくる上で非常に大きな要素です。
みなさん、「実際 自分は何のために仕事をしているのか」という風に聞かれたときに、スッと答えられるでしょうか。それを答えているときに、自分が本当にそうだなと納得できるものがあるでしょうか。
これは正解があるわけではなくて、自分にとってこれが大切だというものがあれば構いません。何のために自分は仕事をするのかということを、それを考えて 自分なりに答えられること。自分として納得感をもってとか、楽しく語れるものがあるかどうかで、仕事の時間の有意義さというのが変わってきます。
これは非常によく使われる例ですので、ご存知の方も多いと思いますが、私も研修の中などでよくご紹介させていただく「レンガ積み職人」の比喩の話は有名です。
レンガを積んでいる職人さんが3人います。3人ともレンガを積むという仕事に取り掛かっています。
1人ずつ 「何をしているんですか?」 と聞くと、
1人目のレンガ職人は、魚の死んだ目みたいな感じで、何とも面白くなさそうな疲れた様子で、「見れば分かるだろう…私は親方の命令でレンガを積んでいるんだ」と答えました。
2人目のレンガ職人は、1人目ほど疲れた様子ではなく、結構元気そうな感じで「これは教会を建てているんです」と答えました。
3人目のレンガ職人は、イキイキとした表情で目を輝かせながら、「これは地域の未来に繋がる 素晴らしいみんなの集まれる教会の場所を造っているんです」と答えました。
3人のレンガ積み職人の話
この話は、「意義」ということを端的に表しています。3人は同じ仕事をしています。でも、何のためにやっているのかを自分なりに答えられている度合いが違います。
1人目の職人さんは、とにかくやらなきゃいけないのでやっているんですよという世界で仕事をしていますが、3人目の職人さんはやっていることがどういう意味や意義に繋がっているのか、自分なりの考えをもって仕事をしています。これが非常に充実したキャリアをつくる上で重要で、そして意外と難しいことだったりします。
私はいろいろな会社で、研修やコンサルティングでお手伝いして、いろいろな社員さんにお会いしてこのような話をしてますけれども、結構多くの方が「考えたこともなかった」「やらなければいけないから仕事は」「お金を稼ぐこと以上のことなんかイメージしたことがないです」と答えられます。
一方で、「この仕事が社内のこういうことに役に立ってる」「お客さまにこう喜ばれるからだ」みたいなところに繋げてお話される方もいます。また、「自分の人生にこういう目標があってそれに繋がっている」「会社を超えて社会などに○○な状態をつくりたくてそのためにこの仕事に取り組んでいる」みたいなことを語れる方もいらっしゃいます。
どの状態が正しいということではありませんが、「充実したキャリアを築く」という観点から考えると、自分なりに考えて、自分が納得のいくものを持てているということが非常に重要です。
私自身も何のために仕事をしているのか、ずっと考えてきました。これはひとつ申し上げておくと、何のために仕事をするのかは変わってもいいものです。20代の頃の自分の仕事の意味と、30代・40代・50代・60代・・・と歳を重ねたり、ライフステージが変化したりして、変わっていっても全然問題ありません。
大切なのは今の自分にとって本当に腹落ちしているか、納得しているかどうかです。だから自分は仕事を頑張っているんだという理由をしっかりと持っていること自体が大切だと思います。その理由は人それぞれでいいし、また、ずっと同じ仕事をし続けていたとしても、年齢などによって変わっていってもいいのです。
仕事に集中できている/没頭できている状態であること
2つめの仕事に集中できている/没頭できている状態であることとは、どういうことかというと、例えるなら「時間を忘れて仕事ができている」「お客さまのための資料を一生懸命作ってたら気付いたら夕方になっていた」「打ち合わせを一生懸命やっていたら気付いたら定時だった」みたいな時間を忘れているような状態が没頭している状態です。
この状態をつくるために大切なのが、チクセントミハイ教授の『フロー体験理論』の考え方です。フロー体験理論とは、 アメリカの心理学者、チクセントミハイ教授によって研究された 「人の集中力が高い状態はどういうときに生まれるのか」に関する理論です。
人間は難しすぎることをやっていると、不安が強くなって集中できなくなります。反対に、簡単市議ることをやっていると、退屈になって退屈してしまって 没頭や集中できなくなります。充実したキャリアを築く上で、自分にとって最も適切な難易度の仕事にチャレンジできていることは非常に重要です。
自分の例でいうと、例えば この1ヵ月は忙しいなというとき、あまりにも自分にとって難易度が高すぎると、「大丈夫かな」「ちゃんとこなせるかな」と不安が強くなってきて、集中力も途切れてしまうことがあります。今日1日やることだけでも終わるのか / 終わらないのか 大丈夫かな?と、不安の中で仕事をしているとなかなか集中できません。
そういったときには、朝 今日のタスクを確認して、ちょっとこれは終わらないかもしれないというものは、今日やることは諦めて、後ろ倒しにすることを決める。その調整を先にするようにしています。(もちろん後ろ倒しにするのは、今日が締切の仕事などではないタスクです)
この範囲で今日はOKということが見えてくれば、頑張ってやろうと集中できます。集中して過ごせた日の充実感や快感はやっぱりあって、1日終わって「今日頑張ったな」というのは、適切な 絶妙に自分が何とか頑張ったら終わりそうというものをやり遂げたときにより強く感じる実感知があります。
1日単位でもそうですし、1週間・3ヶ月・1年間という単位でもそうなんですけど、このように日々適切な難易度に自分がチャレンジできているということが、充実したキャリアをつくっていく上で非常に重要です。
これが、タル・ベン・シャハー教授が言っている、充実したキャリアをつくる二大要素の概要です。ひとつひとつ細かく見ていけば、解像度高く 細かく考えていくこともできますが、まずはこれを押さえていただくだけでも、キャリアの充実度が、全然違うものになっていくのではないかなと思います。
これが絶対の正解というわけではありませんが、もしピンとくるところがあれば、是非実践してみていただければと思います。少しでもお役に立つ情報がありましたら幸いです。
充実したキャリアを築くには「意義」と「没頭・集中」が大事
- 自分なりの仕事の意義は何だろうなと考える時間をとってみる
- 今日没頭するために 集中力を高めるために、これくらいの難易度設定にしてみようというのを調整できないか考えてみる