上手くいっていないわけじゃないけど何となく行き詰まりを感じている…そこから脱却したいときの心理学に基づく考え方のヒント

この記事は約11分で読めます。

今回の探究テーマ

ある程度仕事にも慣れて生活にも特段困っていないんだけれども、人生こんなものかなぁ…と、少しずつ気力がなくなってきているような感じがする。20代の頃のように頑張るって感じでもないし、すごい稼げなくてどうしよう、不安だみたいなことでもないんだけども、何かこのまま終わっちゃうのかなぁみたいなそういった漠然とした不安みたいなのはある。

今回は、このような、上手くいっていないわけじゃないけど何となく行き詰まりを感じている…そこから脱却したいときの心理学に基づく考え方のヒントをご紹介します。

動画で見る

記事で読む

上手くいっていないわけじゃないけど何となく行き詰まりを感じている

ある若手のビジネスパーソンの方とお話していたときにご相談いただいたというか、「こんな感じあるんですよね」「そういう感じの人が周りにも結構いるんですよね」という風に伺ったのが、

ある程度仕事にも慣れて生活にも特段困っていないんだけれども、人生こんなものかなぁ…と、少しずつ気力がなくなってきているような感じがする。20代の頃のように頑張るって感じでもないし、すごい稼げなくてどうしよう、不安だみたいなことでもないんだけども、何かこのまま終わっちゃうのかなぁみたいなそういった漠然とした不安みたいなのはある

というお話でした。

このような状況は多くの方が通過するというか、そういうのを迎える時期というのがあるよなぁという風に思います。今回はこのご相談について、その状態から脱却したいときの心理学に基づく考え方のヒントをご紹介します。

この状況を心理学の研究などから分析すると…

まずこの状況を理屈を持ってきて説明しようとすると、チクセントミハイという心理学者が提唱している「人の集中力が高い状態はどういうときに生まれるのか」に関する理論「フロー体験理論」が参考になるかと思います。

フロー体験理論は、自分の持っている能力と取り組んでいる物事の難易度、このバランスが非常に絶妙な難易度のものにチャレンジしているときに、人間は没頭している=非常に集中しているということを研究して発見しました。

この没頭している状態がフロー状態だったときに、自分の能力が高すぎてやっていることが難易度が低すぎると、人は退屈になってきます。自分の能力が足りないのに難易度の高すぎるものにチャレンジしていると、人は不安になっていきます。

「不安」「没頭」「退屈」という状態があったときに、冒頭お話を伺ったような状態というのは、この3つで分けるとしたら、退屈という状態にあるという風に言えるのではないかと思います。

フロー体験理論|Dialogue space
フロー体験理論|Dialogue space

退屈にはいっている、何か気力が湧いてこないなみたいな状態だったときに、この理論に沿って言い換えてみると、「本当はもっとやれる能力みたいなものを自分は持っているけど、そんなに高い目標を追いかけているわけでもなく、今の仕事はこなせちゃう」「能力と難易度のバランスでいうと、求められる難易度よりも能力が高すぎるので、仕事が退屈になっている」とも言い表せます。

例えば今 営業職で、年収500万円もらっていて、そこそこ満足する生活をしていると、これを年収700万、800万、900万円…にあげていこうと思ったら、相当頑張ればいけるのは見えるけれどもそこまでして頑張りたいかな、年収500万くらいでいいか…みたいな感じになったりすることはよくあるのではないかと思います。

これは、要は「不安」「フロー(没頭)」「退屈」でいうと、不安になるのも大変だし、自分を退屈においておくかというようなという心の動きというのが働いているわけです。こういうような状態でちょっと気力が湧いてこない、何となくつまらないという状態が、仕事に慣れてくると起こるというのはよくあります。

あらためて自分の状態を観察して、フロー体験理論の能力と難易度のバランスで考えると自分がどの位置にいるかを考えてみる。

どうしたらこの状態から脱却できるのか?

フロー体験理論にのっとって考えれば、これは挑戦しましょうということになります。より難しいものに取り組んでいけば、退屈を越えてフロー状態に入っていける。

ただ「どんな難しいことに取り組むの?」というのが実際問題、難しいところです。この仕事は慣れてきて、まぁ仕事はこんなもんかなみたいなときに、これ以上何に取り組むのかといったときに、

  1. 仕事
  2. プライベート

それぞれで考えてみれるといいのかなと思います。両方チャレンジしてもいいですし、片方だけチャレンジしてもいいです。仕事上のチャレンジが、そんなに今 気力が湧かなかったら、何かプライベートでチャレンジをしてみるということで、結構活力が蘇ってくることがあります。

本当に何でもいいです。自分が好きでわがままを言っていいんだったら、自分がやってみたいことは何だろうかみたいなことを考えてみてください。

例えばファッションが好きな人であれば、毎週週末のたびに自分の好きな服を捜し歩くということをしてみる。そうすると、そういえばこういうの好きだったな、楽しかったなというと盛り上がってくる。何かいい服に出会えて、買って 着てみて、すごいいいなと気分があがってきたときに、もっとおしゃれを楽しみたいときに、もっとお金があったら楽しめるから、やっぱりもっと頑張って稼ごうかなみたいになるケースもあります。

そうやって だんだん自分の生活の色が蘇ってくる。白黒の退屈な状態、無気力な状態から、だんだん色鮮やかになってくるというのは起こったりします。

全然違うもので、私はある年齢からゴルフをやり始めましたけれども、ゴルフに限らず、そういうスポーツみたいなものに取り組んでみて、初心者だったところからちょっとずつ上達していく楽しさを覚えていく。それによって、人生トータルの彩りがあがってくるということが起こることもあります。

このときにすごく大切なのが、自分に素直にわがままになるということです。本当に自分が好きで楽しいこと何かなを考えてみること、これがとても大切です。

大人になっていくと、結構いろいろなことを我慢できるようになるというのあります。子どもの頃は、「あれやりたい」「これやりたい」と何でも口に出していたのが、大人になるにつれて、「今このシチュエーションではできないんだな」「自分のこの生活や年収だとこれはちょっと難しいな」みたいに、自分の気持ちを抑えていって、ちゃんと範囲内で生活するという技術を身につけていきます。

それ故に、その範囲で収まるくらいでしか生きていけないんだという風に逆に思っているんです。それを飛び越えるような動きというのを、ちょっとずつやってみる。

これもちょっとずつというのがおすすめでして、これもタイプがあって、いきなりドーンとやった方が上手くいきやすい人もいるかもしれませんが、生活の中で、最近週末 家の外に出ていなかったなというのを月に1回少し遠くへ出かけてみようかなとしてみたり。そういえばやっぱり車は好きだったから、ちょっとディーラー見に行ってみようかなとか。

これくらいのちょっとしたところから始めていただくのが個人的にはすごくおすすめです。

まずは本当にちょっとしたことからでいいので、自分に素直にわがままになってみたときに、好きなことややりたいことに挑戦してみる。

ちゃんと範囲内で生活するという技術が身について、自分の気持ちが抑え込まれているのかもしれません。そこを少し飛び越えるような動きを自分に許可して、取り組んでみることが大事。

学習性無力感から抜け出し、Growth Mindsetを育む

もうひとつ、このテーマに関してキーワードを出すとすると、「学習性無力感」というのがあります。

これは同じことを繰り返して、上手くいかなかったときに、これはやってもしょうがないんだという風に学んでいくというのが学習性無力感です。人は、大なり小なり、この学習性無力感というのを持っているものです。

例えば 「ああしたい」「こうしたい」というのを身近な大人である親に対して、交渉したり 提案したり 掛け合ったりしても、「そんなのうちはダメ」と全部断られてしまって、結局どれだけお願いしたって叶わないんだなということを学んでいくという経験をしたことがある方もいるかもしれません。

例えば学校の中で、何かこの校則おかしいとか、こんな授業つまらないとか思って、それを大人に訴えても、あなたの方がちゃんと頑張りなさいと返されて、議論することもできず、学校の方は変わってくれないという経験をした人もいるかもしれません。

会社でもそうです。もっとこういうのやったらいいじゃないんですかと、上司に言ってみても、余計なことを言わずに言われたことをちゃんとやってろと言われる、みたいなことが続いて、自分から働きかけてもしょうがないということを学ぶ経験をした方もいるかもしれません。

このように学んでいくのが学習性無力感です。

言葉でいうのは簡単だけど、実際やるとなったらそれなりの大変さはありますが、学習性無力感を越えていくというのが、何かそんな気力が湧かないんだというところを打破していくポイントになると思います。

これも例えば 会社の中で、納得いかないところがある内容について、社長室に駆け込んで、「社長!これおかしいです!」とやるのはちょっとやりすぎかなと思いますけど、小さいところからでも、本当はもっとうちの会社はこういうのをやった方がいいのにな、こういう風にできないかなということを考えて、行動に移していく。

この行動に移していくというのも、本当に小さな一歩をまず踏み出してみることが大事です。

例えば、社内の身近な仲のいい先輩に実はこんなこと思っているんですけどというのを相談してみる。そうすると先輩が「いやぁ…でもなぁ…」「言っていることはわかるよ」「俺もすごい同じようなこと考えてるよ」「でもそれ会社に言ってもわかってくれないかもな」みたいに言われるかもしれません。けど、そこでやめるのではなくて、「でもどうやったら会社を動かしていけますかね」「上司も巻き込むにはどうしたらいいですかね」とちょっとずつ広げていくわけです。

そうして 1回試しに、上司のところに提案を持っていってみます。「そんなのうちの会社じゃできないよ」と言われるかもしれません。でもそこで何故できないのかというところの要素や理由をちゃんと確認して洗い出して、問題点をクリアしたり、よりアップデートした案を次にもう1回上司のところに持っていく。

上司の立場も考えて、上司が動きやすいように持っていくなど、いろいろ試行錯誤を積み重ねていくと、これだったら部長に話ができるかもと上司も動いてくれる。次には、役員に話せるかもと部長が動いてくれるということが起こったりします。

これはいうのは簡単なんですけど、やるのは大変です。何故多くの方がやらないかというと、学習性無力感が先にあるからというのが大きな理由です。どうせやったって無駄だろうなという気持ちがあるので、細かいことに取り組んでいけない。なので、技術があがらないので、いつまで経ってもクリアできない。壁を突破できないということが起こります。

これはなんでもそうなんですけど、例えば、自動車が壊れましたみたいなことがあったときに、普通だったら途方に暮れますよね。修理工場に持って行って、修理してもらうしかないわけです。それくらい 、自分では車のどこをどう見たらいいのかわからないことが起こるわけですけどもわけですけども、よく丁寧に見ていって、こういう状況で、ここが壊れているからこう直せばいいんだとわかれば、自分でも直せるようになるかもしれません。

車だとなかなか大変かもしれませんが、例えば自転車くらいだったら、そういうこともできるようになってくるというのが起こってきたりすると思います。

これは比喩的として出した話ですが、よく観察して よく見てみて、解像度をあげていくというのがすごく大切です。そうすると、結構動かないと思っていたものも動くようになってくるのかという経験を獲得していきます。

これをGrowth Mindset(グロースマインドセット)です。

Growth Mindset(グロースマインドセット)とは、自分が動いていったら前できなかったこともできるようになるのかという感覚です。これがすごく大切です。

このGrowth Mindsetは、子どもの頃はある種誰しも持っています。何故ならば、少し前の自分ができなかったことができるようになるという経験を、いっぱい持っているからです。

鉄棒で逆上がりができなかったのができるようになった。足し算引き算なんて知らなかったのが、計算ができるようになった。このように、前の自分にはできなかったことができるようになるというのが、子どもの頃には当たり前に起こることです。

これは大人になってからも、実はいくらでも磨いていけるものがあります。趣味の世界で できなかったことができるようになるもありますし、ビジネスの世界でもきっとダメだろうと思っていたものが実は磨いていったら意外とできるようになるみたいなことが起こったりします。

それをひとつひとつ小さなところから丁寧に取り組んでみると、学習性無力感を越えて、フロー状態理論でいうところの「退屈」から「フロー状態」の方に、自分のちからで自分を持っていける。フロー状態というのは、自分が充実感を感じる、やりがいを感じるというような状態です。この状態に自らを持っていくことはできます。

「やってみたらできるようになった!」という体験を意識する。仕事でもプライベートでも何でもいいので、ちょっとしたチャレンジをして、成長体験を積み重ねていく。

上手くいっていないわけじゃないけど何となく行き詰まりを感じているときは

  • あらためて自分の状態を観察して、フロー体験理論の能力と難易度のバランスで考えると自分がどの位置にいるかを考えてみる
  • まずは本当にちょっとしたことからでいいので、自分に素直にわがままになってみたときに、好きなことややりたいことに挑戦してみる
    ⇒ちゃんと範囲内で生活するという技術が身について、自分の気持ちが抑え込まれているのかもしれません。そこを少し飛び越えるような動きを自分に許可して、取り組んでみることが大事
  • やってみたらできるようになった!という体験を意識する
    ⇒仕事でもプライベートでも何でもいいので、ちょっとしたチャレンジをして、成長体験を積み重ねていく
タイトルとURLをコピーしました