「ちゃんと話を聞いているつもりなのに、なぜか心が通わない」
「相手の意見にどうしても賛成できなくて、聞くのが辛くなってしまう」
人間関係の中で、そんな風にモヤモヤした経験はありませんか?
多くの人が「聞く=相手に賛成すること」と混同してしまいがちですが、実は違います。相手の考えを受けとめることと、自分の意見を曲げることは全く別の話なのです。
今回は、相手の内側に触れ、互いの世界を分かち合うための「左脳的理解(背景)」と「右脳的受容(感情)」という2つの聞き方についてお話しします。
毎日のコミュニケーションが少し楽になり、目の前の相手との関係が静かに変わり始めるヒントになれば幸いです。
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「聞く」からはじまる相手の内側と出会う2つのアプローチ
前提:「聞く」と「賛成する」を明確に切り分ける
具体的に聞き方のステップへ入る前に、ひとつ大切な前提があります。
それは、「相手の話を聞く・受けとめる」ことは、「相手の意見に賛成する」こととは違うということです。
「話を聞いてしまうと、相手の意見を呑まなければいけないのではないか」
「賛成できないから、聞きたくない」
そう感じて心を閉ざしてしまう方は少なくありません。しかし、意見や価値観が違っていても構わないのです。 「あなたの意見はそうなんですね。私とは違いますが、あなたがなぜそう考えるのか、その理由や背景をしっかりと受けとめたいです」
このスタンスを持つだけで、対話のハードルは劇的に下がります。自分の立場を横に置き、相手が生きている世界を理解しようと試みること。これが「聞く」の本質です。
Approach 1|構造と背景をひもとく「左脳的アプローチ」
1つ目の方法は、相手の「考えの背景」や「ロジック」に耳を傾ける聞き方です。思考の構造を解き明かしていくように、3つのステップで深掘りしていきます。
こちらは3つのステップに分けられます。
- STEP1:相手の意見を聞く
- STEP2:その意見のもとにある考え方や価値観を聞く(なぜそう考えるのか)
- STEP3:その考え方や価値観が生まれた背景や体験を聞く
STEP3まで聞けると理想的です。

【具体例】出社時間をめぐる対話
例えば、「毎朝9時の定時に来ない上司」と「それに苛立ちを感じている部下(あなた)」の対話を考えてみましょう。
※ここでは「上司の遅刻の善悪」を議論したいわけではありません。現実に「ルール違反では?」とモヤモヤする場面の方が話を聞くことは難しくなるため、あえてそのような事例を出しています。相手の頭の中(背景や価値観)を一度解像度高く理解してみるための対話アプローチとしてご覧ください。
- STEP 1:意見を聞く
「なぜ9時に来ないのですか?」と部下が尋ねたとします。上司はこう答えます。
「9時というルールを守ることを、正直あまり重視していないんだ。今まで守れと言われたこともないし、言われて少し驚いているけれど、まったく気にしていないよ」
相手は気にしていない。あなたは気にしている。これが、まず聞こえてきた「意見」です。
- STEP 2:ベースの考え方や価値観を聞く
続けて「なぜ気にしていないのですか? 私は気にするタイプなのですが」と尋ねます。すると、こんな答えが返ってきます。
「仕事で大事なのは、始業時間を守ることじゃない。納期を守れるか、パフォーマンスが出るか、付加価値を出せるかだと思うんだ。10時に来たほうが成果が出るならそれでいいし、8時に来て成果が出るなら8時でもいい。そういう考え方で仕事をしているんだよ」
あなたとは、まったく違う価値観かもしれません。「ルールはみんなで守るから意味があるのだから、勝手に破ってはいけない」と感じる方もいるでしょう。そうした気持ちはいったん脇に置いて(保留して)、こう受けとめます。
「パフォーマンスが出るなら、ルールは本質ではない、という考えなんですね」
- STEP 3:背景・体験を聞く
さらに「なぜそう思うようになったのですか?」まで聞けると、受けとめやすくなることが多いです。たとえば、こんな話が聞けたとします。
「学生時代、部活に強いエースの先輩がいてね。みんなと同じ練習をするタイプじゃなく、自分で考えて、これまでのルールと違うことをやる人だった。先生とぶつかることもあったけれど、それでも結果を出していて、すごく格好良かったんだ。自分もルールに縛られず、本質的に大事なことを考えてやってきて、それでうまくやってきたと思っている。だからこういう考え方になったんだよ」
ここまで聞くと、「なぜこの人は朝来ないのだろう」と思っていた頃とは、見え方が変わることもあるでしょう。
「そういう人もいるのか。私はやっぱりルールを守ってほしいタイプだけど、前よりは少しわかる気もする」
そして丁寧に受けとめられたと感じると、多くの場合、相手もこちらの話を聞いてくれるようになります。今度は自分が話す番です。「私がルールを大切に思うのは、こういう理由があって……」と。
これは『7つの習慣』にある「理解してから理解される」ということです。まず相手を理解しようとして聞く。
自分の内側をしっかりと聴いてもらえたと感じた相手は、今度はあなたの言葉(「なぜ自分がルールを大切にしたいのか」という思い)にも、自然と耳を傾けてくれるようになります。
Approach 2|感情と心に寄り添う「右脳的アプローチ」
もう1つの聞き方は、論理や背景ではなく「感情」や「心象」にフォーカスする聞き方です。感情の波を静め、安心感を生み出すコミュニケーションとして非常にパワフルに機能します。
こちらも3つのステップです。
- STEP1:相手の気持ちを聞く
- STEP2:その気持ちが生じた状況を聞く
- STEP3:具体的にどうしてほしいのかを聞く

【具体例】出社時間をめぐる対話(続き)
先ほどの例を、上司と部下の立場を入れ替えて考えてみます。ここでは、上司であるあなたが、定時に出社しないことについて咎めてきた部下に話を聞く場面です。
- STEP 1:相手の気持ちを聞く
まず、意見ではなく気持ちを尋ねます。「結局どうしたいの?」と結論を急がず、「今、どんな気持ち?」と聞くのです。
「正直、すごくイライラします。ルールを守らない人がいると、イライラするし、そんな自分も悲しくなってしまうんです。なぜ守らないんだろうって……」
「そうか、イライラさせてしまっているんだね。悲しい思いもさせているんだね」
「ごめんね」という気持ちが自然に湧いたなら、伝えても構いません。ただ、ここで必ず謝る必要はありません。「イライラしているんだね」と、気持ちをそのまま受けとめます。
- STEP 2:気持ちが生じた状況を聞く
次に、「その気持ちは、どんな状況で起きるの?」と聞きます。パートナーや友人との会話のほうが、イメージしやすいかもしれません。
「人がルールを守っていない場面だと、イライラするんです。あなたが遅刻してくる場合もそうですし、他にもこういうケースも、こういうケースもあって……」
「そういう場面でもイライラするんだね。なるほどね」
この「なるほどね」があるだけで、「聞こうとしてくれているんだ」「受けとめようとしてくれているんだ」という安心感が伝わります。
- STEP 3:具体的にどうしてほしいのかを聞く
最後に、「具体的には、どうしてほしいか教えてもらえる?」と聞きます。できるかどうかの約束は、この段階ではしなくて構いません。
最初の2ステップを踏めていると、相手は落ち着いて、本当に望んでいることを話してくれます。逆にこの2ステップを飛ばすと、ヒステリックな意見になったり、抽象的すぎて何をすればよいかわからなかったりして、取り付く島がなくなることもあります。
たとえばこんな答えが返ってくるかもしれません。
「きちんとコミュニケーションをとれるようにしてほしい」
「ルールが大事なら、みんなで守りたい。守らなくていいルールなら、就業規則そのものを見直しませんか」
「確かにそうだね。私だけルールを外れているのは健全じゃないから、就業規則の見直しをプロジェクトとして進めよう」
もちろん、現実がここまでうまくいくとは限りません。それでも、聞く力を高めていくと、「ではどうしたらいいか」を、お互いを尊重した状態で話し合えるようになります。
STEP 1と2を跳ばして結論(STEP 3)を急ぐと、感情が置き去りにされ、お互いにヒステリックになったり頑なになったりしてしまいます。「まず感情を聴く」という順番が極めて重要です。
総括
お互いの内側を尊重し合える世界へ
「相手の背景を構造的に理解する(左脳)」
「相手の感情をそのまま受けとめる(右脳)」
この2つの聞き方は、どちらが良い・悪いではなく、目の前の相手やシチュエーションに応じて意識的に選択していく技術・スキルです。
相手の「内側(価値観や感情)」を丁寧に観ようとするとき、私たちは自分自身の「内側(固定観念や偏見)」にも同時に気づかされます。対話とは、互いの内側を静かに観つめ合う豊かな営みなのです。
この「聞く技術」を少しずつ育み、自分も相手も大切にできる大調和の境地を、ともに目指していきましょう。
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