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Tさんが抱えている課題は?
今まで聞いていて、ちょっとその傾向は感じてるんですけど、(これまでいろいろ話してきたので)ご自身でも、何を言われるか、わかっていると思うんですけど、Tさんは、工数をかけようとするんです。時間をかけようとする。
「あ、もう15万円で受けちゃったから、徹夜してでもやろう」みたいな。でも、仕事で価値が出るというのは、そういうことじゃないんです。一瞬でひらめいた、1秒しか時間かけてないパワポでも、すごい価値があるということは、全然あり得るのが、ビジネスの恐ろしいところなので、価値を出すために時間をかけにいこうとしないことが、Tさんにとってはまず大事かなと思います。

それって、どうやったらできますか?
これまでTさんが歩んでこられた道とか、私がTさんの相談に乗ってきて喋った内容の記憶とか、トータルで言うと、やっぱり1つ、出力ポイントは絞った方がいいと思います。
出力ポイントと言ってるのは、「ここは、私、すごい価値を出せる領域です」というところのことです。すごいわかりやすく言うと、私の場合、本業は組織コンサルタントです。で、「(組織)がこんな状態で」みたいなことであれば、レバレッジポイントを見つけて、自分に任せてもらえたら、他の組織コンサルタントでは変えられないような組織の変わり具合をこの時間で出せますよ、みたいなことをお客さんに言えるんですね。
それは、私は組織というものについて、専門的に極めてきていて、精通してるとか、詳しくなってきてるから、どこがテコの原理で動くところ、レバレッジポイントなのか分かるから、「石川に頼んだら、確かになんか、あんなに動かなかった組織が、大きな山が動き出したぞ」みたいな結果も出しやすいんです。
で、そういう価値を出せるのは、出力ポイントが、私はそこに定まってるからなんです。いろいろなことやっていたら、それぞれの専門分野の出力ポイントが高い人たちに、なかなか敵わないというのは、それはそれはありますね。
全面的に何でもできるというのは、それはそれで逆にできる人が減ってきますので、「自分は全面的にいけます」みたいな方向で頑張るのもあると思いますけど、それもある種の専門性です。
ある程度出力ポイントを決めておかないと、単価は上がらないですし、セルフイメージが上がってこないんです。「どれも、まあ、そこそこできる人なんだよな」みたいな感じだと、結局「でも、それぞれ、もっとできる人いるんだよな。そんな私がこんな単価……いやいや、他にもっとできる人いるもんな」みたいにいつまで経っても単価が上がりません。
素直に言うと、そこの感覚で言いますと、私は、自分の専門領域において、自分よりできる人は、正直あんまりいないと思ってるんですよね。いるにはいるんです。でも、その人たちはすごい売れっ子だから、捕まらないんです。それでいったら、自分はその人たちの単価の0.9掛けで引き受けたっていいわけです。「いや、あの人たちに頼んだらね。そうですよね。500万ぐらい平気でかかりますよね。私は、400万でも全然できます」みたいな。
というセルフイメージを持っていないと、お客さんから声がかかったときに、単価の提示もできないですし、自信なさげに言ったら、「あなたに頼んで大丈夫ですか?」って、そりゃなりますしね。

ああ、なんかちょっと点と点が線になった気がしました。今の話で、過去も、その自分が何者なのかみたいな、その強みが作れないみたいなのが、ちょっと引っかかってるんですよねという話を、たぶん、何回も散々やってもらったと思うんですけど、多分ここに引っかかってたのかもしれないですね。
いろいろやってきたとは思いますし、基本、帯でもらったらなんとかやれます、みたいな感じでは売ってきたんですけど。それでも、絞らずやればいいよねで、腹落ちはどこかしてるものの、「自分はこれの専門なんで、ここが強みなので、なんで単価はこの話に関してはこの金額です」を、自信持って言えないというところに紐づいて、なんか動きづらいな、本当にこれでなんか何でも屋みたくなってるけどいいのかな、みたいな感じだったなって、ちょっとなんかすごい納得できました。
この話は、Tさんといっぱいしてきているので、初めてした話では、正直ない感覚なんですけど。なので、何の専門家と名乗るのかは、ブランディングって、本当に伝わらないと意味がないので、よく考えた方がいいですけど、よブランディングを意識しないと、どうしても単価も上がらないですからね。

いや、本当にそうなんですよね。一社は、単価を割と高めに頂いてるんですけど、それ故、猫の手として入ってるんですよね。なので、「あれいける?」「これやってもらえる?」みたいなのが、無茶苦茶くるんです。その中の1本が「動画の編集いける?」と言われて、「一旦、こういう感じのものだったらいけますよ」と言って受けたんですけど、それが莫大に時間がかかったというのが、ゴールデンウィーク、忙しすぎて死んでたの話なんですが。
まさにおっしゃる通りですね。それが悪いとは全然なくて、ただ、その「何でもやりますよ」で入ると、うーん……結構スキルがいるとか、専門で出した方が、もうちょっと自分もヘルシーだし、なんか単価もよかったり、クオリティも、時間をかけてつくって、もしご要望があれば、そこもちゃんと帳尻合わせられるのに。
「何でもしますよ」で入ったが故に、重たいものから小さいことまで全部拾うことになっちゃうというのが、割と苦しいぞみたいなのが、本当に最近発生していたので。何の専門なのか、それが1本じゃなかったとしても、「この専門家、この専門家、合わせて5本の専門家で、あなたと会うときは音声の専門です」とかやればいいということか、と、なんかすごい今、腹落ちしました。
いや、今まで腹落ちてなかったんかい!という感じなんですけどね。

いや、なんか頭では分かってた、そうだよなと思ってたんですけど、なんかすごい、なんか「ああーっ!」て感じです。なので、だから、その音声の専門家で、ちょっと少し、今までの自分の中では、(単価を)ちょっと上げて出したんですけど、そういうことを重ねていけば、そうですね。苦しい今からは、脱せるのかもしれないと思いました。
個人事業主は実力を上げ、ちゃんと単価交渉をして単価を上げる
前の回などで話した、1日研修をやったときの単価を、3万円、5万円、8万円、10万円みたいに地道にあげていった、そういう話があったときに、過去に研修を5万でお引き受けしていた会社から、「石川さん、またお願いできますか?」みたいな声かけをいただきました。でも、今の自分は、他の会社では8万円や10万円で請け負っていますというとき、「あ、すいません。ちょっと御社の単価では、もうお引き受けしてなくて」みたいなことを言うんですね。
「日程が合わなくて」とかじゃないんですよ。「御社の単価では、もうお引き受けしていなくて」と伝えるんです。もちろん、それで終わった取引先もありますし、意外と「そうですよね、では10万円で」とかなって、今までの単価は、何だったんだ!みたいなことも起こったりするんです。
実力を上げ、単価を上げるということは、それをやらないと、個人事業主は時間が手に入らないですから。何回でも言いますけど、まあ、やったらいいですねと思います。
急激に、今持っている全案件が、単価が倍にならなければいけないわけでもないですし、次にきた仕事のオファーも、急にゼロ1個足して出さなければいけないわけでも、もちろんないです。少しずつでいいので、ちゃんと単価を上げて出してくというのと、セルフイメージをちゃんと持つこと。「え、こんな単価で私は仕事をもらっていいのかな?」と思うんだったら、それは、私からすると、実力を上げていくしかないんです。その単価に見合う自分になるしかないんですよね。

ああ、なんかそこをたぶん、工数なのか、納品物なのかを、プラスオンで付けることでカバーしにいっていたんですよね、最近。だから苦しいんですね。
例えば、月10万で、音声編集を何本か納品しますと、仮にやってたとして、でも、やっぱり何年間かやってきて実力がつきました、もっと知見が上がりました、となったときに、本来であれば、じゃあ、例えば15万なのか20万なのか上げればいいところを、たぶん今の私は、15万にして、作業時間も一緒に増やしていたという感じだったので、実態が変わってないみたいになっていたのが、ちょっとさらに苦しい。売上も上がったけど、工数も同じだけ増えたの苦しいループに入っていた気がします。
実力が上がることで、同じ単価の仕事の工数が減って時給が上がることもある
それで言うと、今ある案件にかける工数をグイグイ減らしていくという手もあるんです。
これもまた研修講師の例で話しちゃいますけど、例えば直取引の企業さんで、何でもいいんですけど、じゃあ新入社員研修を1日やってくださいと言われて、10万円でお願いしますと言われたとするじゃないですか。
で、前は、その会社さんのヒアリングをして、ヒアリングだけで、丸1日。パワポとかを用意する、テキスト開発するのに、丸2日。で、登壇前に脳内シミュレーションとかスクリプト考えるので、丸1日。当日研修して、丸1日。この時点でも5日でしょう。で、お客さんとの事後面談とかでもう1日で、6日間で10万円もらってたわけですよね。
ヒアリング:1日
+テキスト開発:2日
+スプリクト準備:1日
+研修登壇:1日
+事後面談:1日=計6日
でも今は、ヒアリング、5分。「ああ、大体分かります。御社の業界は、そんな状況ですよね。新人さん、そんな感じなんですね。ということはこういう感じですね、オッケーです」。パワポの準備、5分。去年、作ってありますからね。スクリプトの準備、ゼロ分。喋れますからね。研修後のミーティング?「それは追加料金いただきます」みたいになっていくわけです。
だから、1日10万円は変わってないんですけど、かける時間が大きく減っているので、時給は上がってるわけです。単価を上げるのも大事ですけど、これはこれですごい大事なんです。
ヒアリング:5分
+テキスト開発:5分+スプリクト準備
+研修登壇:1日
+事後面談:追加料金
=計1日+10分
で、そうなったときに、前とパフォーマンスが変わりましたか? という話なんです。
研修のパフォーマンスは何かというと(それで本当に研修効果が測れているのかはさておき)、例えば、昔から研修後に、受講者満足度みたいなアンケートを取るわけです。受講者が20人いて、5点満点で平均4.5点でした。そして、準備時間が自分の中で1/10に減ったら、その4.5点だったのが、3点とかになるかといったら、ならないわけです。引き続き、今年も4.5点取りました。「あ、4.5点も取ってくれる研修講師の方は、なかなかいないんですよ、ありがとうございます」みたいなことなんですね。
というときに、Tさんは、そういう意味で、クオリティみたいなものがすごい曖昧なんです。結局、例えば、何か広報の記事書いたとして、そのときに求められるパフォーマンス(結果・価値)は、ホームページ上の閲覧数とか、閲覧時間がだとするじゃないですか。本当に編集時間を半分にしたら閲覧数が減りますか、みたいな話なんですよね。実力がちゃんと上がっていたら、なんだったら、去年より閲覧数が高いんですけど、みたいなことは全然あります。
Tさんの話からは、お客さんがどこで見ているのかというのを気にせずに、なんか「私が頑張って作ったクオリティのもの」みたいな傾向を感じるところがあります。それをやっていたら、いつまでたっても時給は上がらないです。そういう傾向を感じるので、元上司とスタイルがあわなかった話のとき、PM理論のパフォーマンスとメンテナンスの話も、あんまりパフォーマンスドリブンな感じしないんです。

「プロセスで頑張ってます」みたいな、「プロセスで頑張ってる人はなんか評価してあげるべきじゃないですか」みたいな話の傾向を感じるんです。で、そう思っている人は、時間を削る方にすごい抵抗があるんですよね。
え、でも、研修準備を丸1日かけていたときと、10分しかやらないときとで、受講者満足度4.5なのは、変わらないな、みたいな。最初から10分しかやらないみたいなことをやっていたら、らぶん変わっていたんです。私が駆け出しの頃に準備してなかったら、4.5もらえずに3とかになって、「あの講師は、もう呼ばない」となっていたんです。そういう時間をかけるのが大事な時期もいるんです。でも、本当に今もその時間をかける必要ありますかね? ということです。
高単価の仕事ができるようになるってどういうこと?
- 個人事業主が自分の単価を上げていくためには、1つは、出力ポイントを絞って、専門性を上げていくことが大事
⇒何でもある程度できるだと、もっと専門性を極めている人にはいつまでも敵わない - 同じ単価だけど、パフォーマンス(結果)を出す時間が短くなることで時給を上げることもできる
⇒プロセスを頑張ったから価値があるわけではない
⇒求められているパフォーマンス(結果)をちゃんと理解しておく必要がある