前回は、パートナーシップにおいては「距離の技術」が必要であること、そして人によって愛を感じる「5 Love Languages(5ラブランゲージ)」が違うというお話をしました。

今回は、「幸せな夫婦に関する調査結果」から見えてくること、そして掃除などの日常の「違い」の取り扱い方や、変化していく人間関係について考えていきます。
第2回【違いの取り扱いと変化】日常のズレをどう乗り越え、関係性を深めるか
「幸せな夫婦」に共通するたった一つのこと
「最高のリーダー・マネジャーがいつも考えているたった一つのこと」という本があります。
この本は、基本的にビジネス書なのですが、調査会社の著者が書いていることもあって「幸せな夫婦に関する調査」の結果も、本の中で取り扱われています。
調査の詳細については書籍を当たってもらえればと思いますが、結論としては幸せな夫婦(満足度の高い夫婦)は、
「自己評価よりも相手からの評価の方が高い。お互いに。」
という特徴を持っているのです。
ちなみに、調査研究チームは、幸せな夫婦について調査をする際に仮説をもって調査を始めました。「会話の量が多い夫婦の方が満足度が高いんじゃないか」「共通の趣味がある夫婦の方が満足度が高いんじゃないか」などなどです。
でも、そういった仮説は打ち砕かれました。例えば、会話量が多くても満足度の低い夫婦もいれば、満足度の高い夫婦もいる。相関が見当たらないのです。
そういった要素ではなく「自己評価よりも相手からの評価の方が高い。お互いに。」が重要な要素であったということは大変面白いなと思います。
例えば、夫は「自分はそんなにちゃんと話を聞いてあげられていない」と思っていて妻は「夫は必要な時はしっかりと話を聞いてくれる」と思っている。
妻は「自分は仕事で成果を出せていない」と思っていて夫は「妻は本当に素晴らしい仕事をしている」と思っている。そういうような夫婦は幸せである(満足度高い)ということです。
確かに「自分はこんなにやっているのに!」「でも相手は全然認めてくれない。返してくれない」とお互いに思っているような関係性だとしたら、それは苦しいパートナーシップになってしまいますよね。
感謝し合えるような関係、尊敬し合えるような関係を育めれば、それは素晴らしいパートナーシップとなっていくのは想像に難くありません。
掃除はパートナーシップの大きなポイント
掃除というのはパートナーシップにおいて一つ重要なポイントです。喧嘩になりやすい要素とも言えます。掃除には、パートナーシップにおける重要な要素が含まれています。
例えば、「男性の方がキレイ好きで、女性の方が気にしないタイプ」というペアがいたとします。
より具体的に言うと
- 男性: 常に80点以上のキレイさを保ちたい
- 女性: 60点未満にならないと気にならない
というようなことはありえます。
このようなペアにおいては、「部屋の汚さが79点以下になったときに、男性が掃除を始める」ということがよく起こります。
なにせ女性の方は「汚いな」などと感じていないのですから、掃除を始める理由がありません。そうすると必然的に「男性ばかりが掃除をしている」という状況が生じます。
このときに、男性の方が怒り出す、ということもよく起こります。「なんでお前は掃除をしないんだ」「この状態で部屋を汚いと思わないなんておかしい」と、相手を攻撃するといったこともよく起こります。
「あなたの方が潔癖症過ぎる」「神経質なのを直して、もっとおおらかな人間になった方がいい」などなど、女性の方も言い返すと大喧嘩になってしまう、というようなこともあります。
このような時によいパートナーシップを育くむにはどうしたらよいのでしょうか?違いを尊重し合い、お互いに尊敬と感謝を持てる関係にはどのようにしたらなれるのでしょうか?
まずはじめの一歩は、「男性は常に80点以上を保ちたい、女性は60点未満にならないと気にならない」という『違い』を受け止めるということです。
5 Love Languages(5ラブ・ランゲージ)に違いがあるように、掃除や部屋のキレイさに関しても違いがあるのです。どちらの方が正しいということでもなく、これは「違い」なのです。相手が「間違い」なわけではありません。

さて、「どうしたら二人にとって最善か」は、その二人によりますから唯一の正解というものはありません。
例えば、「そうか。60点でOKのあなたからすれば、確かに自分の方が気にしいだし、それなら掃除は基本全部僕がやるよ」というようなことになるかもしれません。
この時に女性の方も「なんでそんな掃除ばっかりしてるの。潔癖症を直してよ」ではなく、「キレイ好きな人で、いつも部屋をキレイにしてもらえてありがたいなぁ」と感謝できている。
男性の方も「潔癖症気味で掃除ばっかりして申し訳ないけれど、自分の基準を尊重してくれてありがたいなぁ」となっていれば、“お互いに感謝し合う”ということができます。
二人で均等に掃除当番をする、という決着になるケースもあるでしょう。
その時も「60点でいいと本当は思っているのに、75点の基準につき合ってくれてありがとう」「本当は自分にも80点基準の人になって欲しいだろうけれど、75点に妥協してくれてありがとう」と思い合えれば素敵ですよね。
これは、実際に実践するのは難しいところもあるかもしれません。しかし「確かに、お互いにこのように思いあえていたら、いいかも」とイメージしていただけるところもあるのではないでしょうか。
二人の違いを排除するのではなく、丁寧にすり合わせをしていくこと。そのことによって素晴らしいパートナーシップが育まれていくのです。
パートナーシップは「変化するもの」である
パートナーシップについて考える時、「別れ」というものについても触れないわけにはいきません。
カップルが付き合う・別れる、夫婦が結婚する・離婚するというのは起こり得るものです。生涯を添い遂げることができたらそれは素晴らしいことですが、だからといって別離が絶対に「悪」なわけではありません。
日本社会はまだまだ離婚に対するネガティブな印象が強かったり、「周りの目を考えると離婚しにくい」という現実もあったりします。しかし、転職や引っ越しと同じように、人生に「変化」があることは悪ではなく、むしろ自然なことです。
一番最初に書いたように、人間関係において「距離」というのは非常に大きな要素です。
ですから「別れて距離が離れたら、とてもいい関係になった」「元恋人だったけれど、別れてから本当に親友になった」というようなケースは当然起こり得ます。
子育てを終えた夫婦が別居状態になり、お互いに楽しく暮らしているということもよくあります。明確な離婚をするわけではなく、状況の変化に応じて距離感や関係性を調整し直しているのです。
逆に、若い頃は喧嘩ばかりだった夫婦が、年を経てから本当に仲良くなったということもあります。
パートナーシップは「一番近い人間関係」と言うことができます。
自分にとって一番大切な関係を豊かに育めれば、幸せな時間、安心した時間といった素晴らしい果実をもたらしてくれます。悲しい時や辛い時も、共に過ごすパートナーがいれば孤独とはまったく違う時間を過ごせるでしょう。
そういった素晴らしいものがあるからこそ「壊したくない」「離れたくない」という気持ちも湧くものですし、世間の目や子ども、経済的事情から離れにくいということもあると思います。
しかし、人間は変化する生き物です。
「この人の性格はずっと同じ」ということもありますが、一方で考え方、価値観、重視するもの、大切にしたいものが変わることも当然起こり得ます。
- 学生時代は友人関係が最も大切だったけれど、子どもが生まれてからは子どもが最優先になる
- 若い頃は仕事に夢中だった人が、年を重ねてワークライフバランスや趣味を大切にするようになる
- 若くして子どもを産んだ女性が、手が離れ始めて仕事に目覚める

パートナーにそのような変化があった時に「こんな人じゃなかった」「前に戻って欲しい」と願うようなことも生じ得ます。片方だけでなく、二人とも同時並行的に変化することもあります。
「愛し合う」ということが、「相手の幸せを願い自分にできることをすること」と「相手に自分を幸せにして欲しいと願うこと」でできている時、変化した相手に対して「それでは自分を幸せにしてくれない」となってしまうことがあります。
例えば、都心のタワマンで一緒に幸せに暮らしていたけれど、パートナーが「田舎暮らしがしたい」と言い出したとしたら、「一緒にいて幸せでいるのは難しい」ということは起こり得るわけです。
変わってしまった相手に対して「約束が違う!」と責めることもできますが、そもそも「生涯絶対に変化することはない」などという約束を人間ができるわけでもありません。
「引き続き都心で暮らしたい私」と「田舎暮らしを始めたくなったあなた」とで、その「違い」を丁寧に取り扱うことです。
丁寧に取り扱っていくと、「意外と私も田舎暮らしに興味があるかもしれない」となっていくこともあるでしょう。逆に「田舎暮らしはまったくしたくない。それであればお別れしましょう」ということになることもあり得ます。
そうしてお互いを尊重して別離という選択になるのは、誠実な選択としてあり得るのです。
「一度くっついたからには絶対に離れてはならない」「離れるのは失敗である」という強い思い込みがあると、むしろ健全にパートナーシップを育むことが難しくなります。
一緒にいられるように、いつも丁寧に「違い」を取り扱い続ける。けれども、丁寧に扱った結果「悲しいけれど、これは別れた方がいいね」ということもあり得る。
それが根底にあることも、素晴らしいパートナーシップを育む上では大切なことなのだと思います。
もしそうでなければ、「変化した相手を責める」「相手の自由を奪う」「相手を支配しようとする」といった意識が生じてきてしまいます。自分の幸せのためだけに、相手をコントロールしたくなってしまうのです。その状態で素晴らしいパートナーシップを育むことはできません。
「自己評価より、相手からの評価の方が高い。お互いに。」
近くにいてそれが難しくなったのなら、離れて距離を取るということが必要な時もあるのだと思います。
今回のまとめと次回予告
1.「正しさ」ではなく「違い」として捉える
部屋の綺麗さや家事の基準(閾値)のズレは、どちらかが「正しい/間違い」ではありません。ただ「基準が違う」だけだと受け止めることが、不満を解消する第一歩です。
2.自分のこだわりを引き受け、相手に感謝する
「気になった方がやればいい」と自分の基準を引き受け、相手を責めるのをやめる。そして、自分の基準を尊重してくれている相手へ、お互いに感謝と敬意を届ける関係を目指しましょう。
2.変化と別れにも誠実に向き合う
人は時とともに変化します。お互いの変化を受け入れ、たとえ歩む道が分かれることになったとしても、これまでの歩みに感謝し「誠実であること」を選択することが、本当の意味で自分と相手を尊重することに繋がります。
次回(第3回)は、パートナーシップの試練の根本にある「投影」の心理学と「親子関係」、そして自分自身のあり方から豊かな関係性を育む本質についてお届けします。



