市場の状況、会社の大方針などから、かなり無理のある状況で日々の仕事に取り組まないといけない。お客様にも喜ばれない。そんな状況でどうしたらよいのか

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今回の探究テーマ:営業職 マネージャー 30代 男性 Mさん

人材系の会社でマネージャーをしています。数ヵ月前に異動があり、新規事業的なところに取り組む部署に配属されたのですが、市場の状況、会社の大方針などから、かなり無理のある状況で日々の仕事に取り組まないといけない。お客様にも喜ばれない。メンバーも辛そう。そんな状況です。

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新規事業的な部署に異動して、なかなか難しい状況の中でのマネジメントが求められている

人材系の会社に勤めていて、マネージャーになって 今5年目です。正直マネージャーになって最初は昨年の3月までは別の部署にいたんですけど、成果も出ていてキャリアとしては順調かなと思っていた中で昨年4月に異動になりました。

 

異動先というのが新規事業的なところをやっている部署なんですけど、会社としては投資をして伸ばしたい。いろいろな制約がある中で あまりプロダクトとしてお客さまに喜ばれない。そういう状態でリリースせざるを得なくなってしまっていて、メンバーもそこに対して不満だったり、お客さまからも文句を言われたりとかがあって上手くいかない。

 

ただ会社としては投資をして、そこから伸ばしていきたいので数字は言われる。っていう状況の中で、上司から何か言われたりとかは特段ないんですけど、とにかくお客さまに喜ばれないし、メンバーは辛そうだし、ちょっとにっちもさっちもいかないみたいな状況を何か少しでもポジティブに捉えて、何かプラスになれたらいいなみたいなそんな状態です。

なるほど、それは嫌ですね。

いま聞きながら、ちょっと比喩のイメージを持って聞いてたんですけど、ラーメン屋の激戦区みたいな感じの場所で、とりあえず空き店舗出てきたから、とりあえず店舗を抑えちゃったし、ラーメン屋をスタートさせますみたいな。

でも何か掃除も終わってないし、材料も揃っていないし、スープも仕込めていないし、みたいな状態で、でも店を開けちゃいました。ちゃんとラーメン作ってから出したいよみたいな、そんな状況なんだなというのを、まず聞いてて思いました。

まさにそんな感じです。

ちょっと大枠で単純に2つに分けたら、そんな状況はご免被ると言ってその会社から離れるというのももちろん選択肢のひとつですし、いや だけど離れることはせずにどう頑張るかっていうことを考えるというのもひとつだと思うんですけど、大きく2つ「今の状況から離れるか」「残ってそこで頑張るか」があったときに、残って頑張るというのが、Mさんの中では前提だという風に解釈したので、ちょっとその前提で話をしていきます。

はい。残ってそこで頑張る方向で大丈夫です。

リソースが足りなくてビジネスが始まるというのは、例えばベンチャー企業が起業しますみたいなことをしたら全然よくあることなんですよね。

とはいえ、社会人の誰しもが経験することじゃないですし、すごく難しいことですし、それこそ大企業の中で、リソースが揃っている環境で仕事をしてきた人からすると、本当にないものだらけという状況だと思います。

でも、ベンチャー企業を2~3社やったことがありますみたいな人からすると、オフィスなくて部屋で仕事していたよとか、お金もないし、そこの専門知識もないけど、チャンスがあると思って始めましたみたいなことは正直全然あり得ると思うので、これは「ベンチャーゲーム」をしているのであるという捉え方をしてみるのはひとつあるだろうと思います。

大企業であっても、新規事業を始める場合は、ある意味ないものだけのベンチャー企業と同じような状況を経験することも。リソースが揃っている環境で仕事をしてきた人からすると、本当にこんな状況で商売をするの?と感じるところもあるかもしれませんが、ベンチャー企業では普通のことだったりもします。なので、これは「ベンチャー企業経験」をしているのであるという捉え方で挑戦してみるのは、ひとつありかもしれません。

で、いろいろと足りない中で、例えば既に大手競合もいる。マーケットにでもベンチャーで入っていって、競合の方が当然リソースは大きく、お金もあり、ブランド力もあるし、認知力もある。

だけどそこでベンチャーを始めていくというのももちろんあり得るわけですけど、そうなったときのゲームの仕方は、例えば代表的なキーワードでいうと、ランチェスター戦略みたいな、セグメントを切ってそこでNo.1になって、セグメントを切ってNo.1になってみたいなものをどうつくっていくかみたいなやり方をしていくことが多いと思います。

ランチェスター戦略

市場競争で競合に勝つための戦略理論。「同じ武器なら勝敗は兵力数で決まる」という前提をもとに、「弱者の視点」と「強者の視点」で分析し、戦い方を考える考え方。

そういうジャイアントキリングゲームなんだという捉え方をするというのは、Mさんも冒頭で捉え方という話をしていたので、一つのやり方かなとは思うんですけど、まずそれを聞いただけで、確かにそう思ったらすっと楽しめそうなのか、いやいや そうは言ってもという感じなのか、どんな感じでしょうか。

お客さまに喜ばれないような段階でサービスを展開していかないといけない

頭で理解はできるんですけど、ずっと楽しめる状態にはならなくて。

 

比較対象がないので、ちょっと難しいところではあるんですが、ベンチャーでもさすがにもっとあろうだろうというくらい杜撰なツールになっていて、リリースされる前から「この機能ないの?」とか、「誰が使うねん、このシステム」というのは薄々思っていたんですけど、蓋を開けてみたらまぁ結構酷いもので、会社のプロダクトの責任者も今は相当ポンコツだけど我慢してくださいっていうのを、堂々と管理職以上が集まる会議で言い放つくらいのプロダクトなんですよ。

 

そこまで言われると、まぁまぁ…頑張れというのはわかるけれど、こっちとしてはモチベーションが湧かないというか、ちょっとなかなかポジティブには捉えられないという感じですかね。

ちょっと質問になのですが、今の話を聞くと、ツールがあって、ツールを使ってのサービス展開があってという状態だと思うんですけど、ツールを作りこむ時間というのを3ヶ月なり、半年なり、確保して、サービスを止めるという選択肢もビジネス的には正直全然あり得るかなと思うんですけど、サービスを走らせなきゃいけない理由は何なんですか。

そこを明確に説明されていないのも、ちょっと不信感の1つだったりするんですけど、もともとですね、延期に延期を重ねてやっとリリースしてるんですよ。本来であれば2年くらい前にリリースされているものが、いろいろな開発の制約の中で延びて延びて……

 

これ以上延ばせないというタイミングで、開発的には一定支持を得られるだろうという前提で出してるんですけど、そこがお客さんの温度感と全然あっていなくてという感じの状態です。

私はMさんの会社やバックグラウンドも何となくわかっているのもあって、そこは割と現場からガツンとゼロベースで、いやいや このサービスの展開の仕方おかしいでしょう!と、強めにボトムアップするという手もちょっとあるのでは?というのが、今まず正直最初に思い浮かんでいることなんですけどどうですか?

なんか全く……現場は僕以外も含めて全員その意見で、僕の上長、レイヤーでいうと部長レイヤーとその上の事業責任者の人、大きく言うと組織がプロダクトと営業で分かれている感じなんですけど、営業はどのレイヤーの人にヒアリングしてもそういう意見で、プロダクト側とあと経営企画っぽい部署がもう1こあって、そこがお客さんの温度感と全然あっていなくてという感じの状態です。

 

そこの…何て言うんですかね、パワーバランスの中で、出さざるを得なかったと聞いていて詳細は全く説明もされていないです。

なるほどなぁ…詳細を聞かされていないところを直接コンタクトできる範囲で聞こうとしても、なかなか回答は得られなそうだなという状況な感じですよね。

そうですね……何かたぶんそれが、それっぽい答えなんだろうなというのが、1つが、うちの会社はメインになる収益の柱になっている事業があるんですけど、僕のいるHRの中で大きい事業が1つあって、そこがどうやら頭打ちを迎えるらしいんですよなので次の収益の柱を作りたい。

HR(Human Resources)  

経営における人的資源(人材)全般を表す言葉。所謂 採用や人材育成、人事制度、労務などの領域のこと。日本では人事部・総務部を指すことも。

僕が今携わっているプロダクトのマーケットは、今後二桁成長で伸びるであろうと 会社的にはみていて、なのでそこを(そのマーケットを)早めに取りにいきたいし、頭打ちになっているので急ぎたいみたいなところがたぶん1つあるのと、後はプロダクトを作っている人がHR領域を知らない人で構成されていて、明らかに知らない人がつくってるよね、これとお客さんが言ってくるレベルのものなので、そこの2つで…何て言うんですかね、急いで出さなきゃいけない、且つ お客さんの期待を測り違えてしまったというのが起きて今になっているかなと思います。

なるほど。素直に石川だったらどうするかなでちょっと今 考えていたことをお伝えするんですけど、それを聞いたときに、これはちょっとなかなか難しいなとか、現実的じゃないなっていうのも正直あると思います。

私は会社員経験がないわけじゃないですけど、割と短めで独立してしまって、好きにビジネスをやってきたというのもあるのでちょっとその感覚とかも正直違うところもあるんですけど、いったん石川だったらこうしたいな、こうするかなと思ったことをお話してみます。

今 お話しいただいたような状況をとりまとめて、戦略レベルでこれは悪手であるということを上に説得しにいくみたいことを試みるのは、まずひとつ王道だなと思います。

結局誰も、Mさんを含めてみなさん、このサービスを失敗させようと思っているわけじゃなくて、でも、このままだともしかしたら、これ むしろ傷口広がるんじゃないかとか、マーケットの評判が悪くなってしまって取り返しがつかなくなるんじゃないかとか、そういうことがあり得るはずなんですよね。

もちろんビジネスですから、最速で収益化したいというのは、ここで今じゃないよねって言っている営業の部署の人たちとかも当然わかっていることだと思います。だけども このデメリットのまま突き進むことが、ビジネス展開上 マイナスと思われるということを ちゃんと整理していくということは、選択肢としてはありえると思います。

それを対処する上でメンバー構成などもこういう風に変えていった方が、より本当はスピードが出るはずだみたいなこととかも、前向きで健全な解決策の方針を示せそうな気もするから、嫌々仕事をするくらいだったら何かもう会社の命令の業務を、6~7割の力とか 半分くらいの力で、悪くいうとちょっとほったらかし気味で、そっちをしっかりと取りまとめしてみる。

決裁権のある例えば役員や経営企画の人などが、ここまでちゃんと言われたら、話を聞かざるを得ないなみたいなものを作るという方に力を入れてしまうというのは正直1つあるかなと思います。

これは、私はMさんの会社の社風が何となくわかるからお話しているところもあって、この記事を見ている方が自分の会社で絶対そんなの無理だし、自分の業務をほったらかしてとか絶対だめだし、と思うようなケースも正直多々あると思います。

ただ、今回のケースでいえば、結構私としてはそこは2~3割の力でもいいから時間をとって、自分なりの手弁当でもいいからやって、本当に自分が納得のいく仕事をしたいというところに注力した方が、中長期的にみて自分の心とか魂を殺さなくて済むと思いますよというのは結構私の意見としてはあります。

それができたらいいなというのは感想としては当然あるんですけど、できるイメージが全くないというのが1つあって、正直に疲れちゃっているというのが、僕のメンタル的なところが前提あるんですが、えっとですね……このツールは、契約形態的にもう止められないんですよ、ちょっと詳細は割愛するんですけど。

 

契約的に何かもうそこが止められないというところと、致命的に1個 この制約があるから、お客さん使わないんじゃんという機能があるんですね。それをどうするかっていうのを役員レベルであげるという話があって、それはうちの会社でいうと(会社の)思想の根幹を揺るがすようなところなので、そこを変えにいくんだというくらい結構でかいことを検討しているみたいなんです。

 

でも逆にいうとそこを検討するぐらい…検討するけど止めないという判断にたぶんなるので、たぶんどんな情報がきても止まらなそうというか、そのネガティブ情報を収集して 開始時には伝えているんですが、何かその検討されている状態とかを聞くと止めずにどう変えていくかということを最優先にやっているんだろうなという風に現場からは思えるので、それで改善されたらいいんですがちょっとこれまでの経緯も含めて、あまり期待できないという感じですかね。

捉え方を変え、自分なりにそれも選択肢として持っていていいんだという許可を出す

今 Mさんの解釈としては、それでもサービス止めずに現場は現場で走ってねというのは、それでも売上を作りたいからとか、改善のデータを取りたいからとか、何というか、全然理由が思いつかない。なんで走り続けろと言っているのか、全然わからないみたいな感じなのでしょうか。

大々的に だいぶ先延ばしにした上で、やっとリリースしていて、会社的にはすごい他の事業との収益のバランスだったりだとか、考えると後に引けないんじゃないかなと思っていることと、あとは…さっきお伝えした根本的に欠けてしまっている機能が是正されるのであれば、もう少しいけるんじゃないって上の人たちは思っているんじゃないかなと思っていて、というあたりですね。

その状況をここまで聞いてみてあらためて思うのは、ひとつは、その会社から離れるみたいなのも極端にいうと選択肢としてはあるなと思います。

でもそうではなくて、残るときにどうするかでいうと、捉え方という話をしてきたと思うんですけど、何かしらの捉え方を変えて、前向きに頑張れるようにするというとき、ここは休むというのもひとつだなと思います。

実は、気持ち的には結構そうなっているんですよ。

 

実は子どもが順調にいったら産まれるので、それのタイミングでゆっくりお休みいただこうかなと思っていて、ただ、これまでいろいろ頑張るのを是として社会人を10年以上やってきている中で、休んでいいのか?みたいなそこに対する気持ち悪さはちょっとあり、何かそこが…それでいいんだっけみたいに、そこがちょっともやっとしているんですけど、気持ち的には休もうモード的にはなってます。

捉え方は、私的には、いろいろなバリエーションがあってよくて、こっちしか駄目という風な考え方や捉え方は、人生やキャリアの途中でいろいろなことが起きるときに、結構対処が難しくなると思っています。

例えば一般的にいうと、真面目にやるというのとずるくやるというのだと、真面目にやるが奨励されるかもしれないんですけど、ちょっとくらいここはずるさが大事だぞみたいなことも、仕事や人生においてあったりすると思うんですね。

例えば、オープンに話し合うのは素晴らしいけど、状況によっては、これは言わないでおく、もうちょっと寝かしてから伝えるというようなことはあるよねと思います。

本当にシチュエーションで絶対にこうじゃなきゃいけないということはなくて、例え一般的に推奨される意見の反対側でもいいし、間にあるものでもいいし、ということの方が多くて、そのバリエーションを増やすこと自体はすごい価値があると思うんですよね。

基本自分は一生懸命に頑張るというエンジンで頑張っているんだけど、休むっていうことを否定するのかといったら、それもやっぱり許可を出しておけた方がいいと、そう思います。

なので サボるというとちょっと、より積極的に悪い方に触れる感じはありますけど、「サボる」なのか 「休む」なのか、「ちょっと手を緩める」なのか、表現はいろいろとあると思いますが、自分なりにそれも選択肢として持っていていいんだという許可を出せるといいと思います。

私はコーチングなどをお仕事でもさせてもらっていて、コーチングのコーチは、相手の話を聞くことが仕事だと基本思っているんですけど、あんまりそれに囚われすぎると、クライアントが歳も上だし キャリアもあるから石川個人のアドバイス的なものを聞きたいと思っているのを頑なに拒否し続けちゃうということが例えば起こったりするときがあるんですよね。

いや あくまでコーチなんで、コーチングはあなたが考える場なんでというこだわりは大事です。大事なんですけど、頑なすぎてもどうかなというのはあります。じゃあ参考までに私だったらこうするなって正直思っていることをお伝えするので、いいなと思ったら使ってみてもいいと思いますし、そこは選択してもらえればと思いますけど、私はこういうのもありだと思うんですよねという風に伝えるということがコーチングの中で絶対にしちゃだめかと言ったら、そんなことはないと思っています。コーチングは、引き出すが基本かもしれないけど、伝えるとか与えるみたいなことだって別にあってもいいよね。

そこは自分の中で、選択肢が多ければ多いほど、人生やキャリアの自由度があがっていくということ自体はベースの発想として持ってもいいのかなという風には思います。

なかなか難しい状況の中で仕事に取り組まなければならない今回のケースでは

  • 捉え方次第というのはそのとおり
    ⇒今回の状況で考えたら「会社を辞める」も「残って頑張る」も選択肢
  • 捉え方の「しっくりくる表現」を探すのは大事
    ⇒「ベンチャーゲームをしている」なのか「波を見ている」なのか、自分にとってしっくりくる言葉を考えてみる
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